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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
「白バラの祈りーゾフィー・ショル、最期の日々」(2005年/ドイツ/監督マルク・ローテムント)

 出演:ユリア・イェンチ、アレクサンダー・ヘルト、ファビアン・ヒンリヒス、アレドレ・ヘンニック他
 「白バラは散らず」という本を読んだことがある。ナチスドイツで「反ナチ」を訴え処刑された若いドイツの人たちの話である。
 これは、娘の愛読書でもある。手元にある彼らの写真を時々眺めることがある。「白バラの祈り」として映画化された。映画化されたことを知り、早速娘と二人で見に行った。
 1943年、ヒトラー独裁政権末期、「打倒ヒトラー!」の文字を町の壁に書き、郵便やビラで戦争反対を訴えた「白バラ」と呼ばれるグループがいた。
 21歳のゾフィー・ショルは、兄のハンスとともに暮らしている。
 他の「白バラ」のメンバーと集まり、ビラを作り投函をしていく。二人は1943年2月18日、ミュンヘン大学構内でこっそりビラを置き、配布しようとする。直後に逮捕され、白バラの仲間のクリストフも逮捕される。
 取調べを受け、5日後、人民法廷で「大逆罪による死刑」を宣告され、即日処刑された。映画は50年間、東ドイツに隠されていたゲシュタポの克明な記録を元に脚本化。取り調べでの具体的なやり取りや法廷での尋問、家族とのやり取りが再現されている。
 ゾフィーが処刑場に入って、首をギロチンで切られるまで10秒かかったとの記録まで残っているそうだ。
 取り調べや尋問を私は息をのんで見ていた。尋問への答えについては、ハラハラしながら見ていた。彼らは一体何をしたのか。壁に「ヒトラー打倒!」と書き、「自由」と書いたこととビラを配ったことだけである。
 ビラの内容は「この戦争は間違っている。早期に戦争をやめるべきだ」といったものだけである。
 ハンスは医学部生で、東方戦線などに参加し、病院で働いたりして、ヒトラーの作戦の失敗、戦争のひどさ、兵士のすさまじい被害などを具体的に見聞きしている。
 彼の経験などをもとに、ビラの内容は戦争反対。この戦争は間違っているということを書いたのである。思想・良心の自由と表現の自由を行使しただけである。
 それがなぜ死刑なのか。
 白バラのメンバーは結局6人が処刑、他の人々も重罪となっている。
 この映画を見ながら、今の日本のことを考えていた。戦争反対四大話というのがある。
 まず第一に、公衆トイレの壁に「戦争反対」と書いて有罪となった人がいる。
 第二に、立川の自衛隊の官舎に「イラク戦争反対!一緒に考えましょう」とチラシを配った人たちが、逮捕・拘留され裁判になり、一審は無罪、二審は有罪となった。
 第三に、国家公務員が休日に『赤旗』号外号のビラ配布して国家公務員法違反で、逮捕・勾留され、起訴された。 ビラの内容は「憲法九条を守ろう」というものである。
 第四に、神奈川県の厚木基地近くのマンションの踊り場などで今までと同じように飛んでいる米軍機などのウォッチング監視をしていた三人が、逮捕された。釈放されたが厚木基地については40年以上、第三次にわたる騒音についての裁判が続き、また市民団体は長年監視活動をしてきた。今までと全く同じことをしてなぜ急に「住居侵入罪」なのか。
 壁に「戦争反対」を書くこととチラシを配ることについても、「白バラ」と全く同じである。
 ハンスは、処刑されるときに「自由」と叫んで死んでいる。戦争反対ということが逮捕・拘留されたり、場合によっては処刑されるのだ。
 「白バラ」のメンバーの裁判における裁判官は、実に醜悪である。「お前たちは、恵まれた大学生で、第三帝国によって大学に行けるにも関わらず、公共心がない。第三帝国のことを思わないのか。戦場に行っている兵士たちに対して、何も思わないのか。下流市民め」と罵倒するのである。
 教育基本法改悪法案が、憲法改悪で、「公益」や「公の秩序」によって基本的人権が制限されるとされ(自民党新憲法草案)、「国を愛する心を育てる」とされることは、本当にまずいと心から思った。
 「お前たちは、国のこと、兵隊さんのことを思わないのか」と罵倒される。ゾフィーはまったくひるまない。「ユダヤ人の大量虐殺は問題である」と言う。裁判官は叫ぶ「そんなのはデマだ。第三帝国を冒涜するのか」と。国家の冒涜として難詰される。
 映画をみながら、不思議な力がわいてきた。
 ゾフィーは時々神に祈る。私は、神に祈ることはしないけれど、心の平安を持ち、勇気と確信を持ってがんばろうと思う、彼女たちのたましいが、私も励ましてくれる。
 ゾフィーは処刑の直前、面会にきた両親に対して言う。
 「後悔はしていない」と。父は言う。「お前は間違っていない。お前を誇りに思う」と。母は言う。「かわいい子。もう家には帰ってこないのね」と。
 裁判の最期、本人の意見陳述の時、ゾフィーは言う。「次にこの席に座るのはあなただ」と裁判官に向かって。つまり、次に被告席に座るのは、裁判官あなた自身だと言い放ったのである。歴史は次にあなたたちを裁くと。
 ゾフィーやハンスのすばらしいところは、「自分たちの活動は必ず勝つ」という強い確信である。
 私自身も、「憲法を変えない戦いに必ず勝つ」という確信を持っている。
 「白バラ」のメンバーに時間を越えて、たましいのレベルで励ましてもらっているみたいだ。「生きることの意味」を静かに深く教えてもらった。
 ぜひ多くの人に見てもらいたい映画である。
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