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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』(ハル・アシュビー監督 アメリカ 1971年)

 大金持ちの家の息子で、退屈していて、自殺願望のあるハロルド。自殺を何度も、恐らく14回くらい試みている。「死にたい」というよりも孤独からの叫びかあがきのように見える。何度かの奇行の結果か、ハロルドのママは、ハロルドの自殺の試みに全く関心を示さない。息子が首をつっていても「ああ、また」という感じで、全くの無視。ハロルドもしっかり首をつっていないのだけれど。
 自宅の広いプール。真黒なスーツのままうつぶせで浮かんでいるハロルド。すわ、溺死か。しかし、きれいなキャップをかぶり、ハラリとケープかマントを脱ぎ、スタイルのいいママは、優雅に平泳ぎをはじめる。「死体」のような息子には眼をくれない。パーティー好きのママ。
 「結婚したら」と結婚相談所に勝手に申し込み、3人の若い女性がそれぞれ豪邸にやってくる。ハロルドの奇行に逃げ出す、女性たち。
 偉い軍人のおじさんの所へもやられ、兵役につけられそうになる。
 「軍人はいいぞ。銀行に金もたっぷりある。」とおじさんはおいに語る。
 映画を見ていると、奇行なのはハロルドではなく、ママやおじさんなのではないかと思えてくる。
 ハロルドの趣味は、全く関係のない人のお葬式に出席すること。中古の霊柩車がマイカーである。そこで、いつもやはり出席している女性に会う。モードは、もうじき80歳。廃車になった車両に暮らし、音楽やダンスが大好き。いたずらっ子のようなモード。一般的には「老女」と呼ばれるのかもしれないけれど、見ているとチャーミング。2人で、路上に植えられ、枯れかけた木を森に植えかえに行く。
 2人は、段々恋人みたいになっていくんですよ。80歳と恐らく20代前半の若い男。2人がダンスをするシーンはステキ。
 この映画が作られたのは、1971年。アメリカはベトナム戦争をしていた。
 直接は出てこないけれど、この映画は反戦映画である。モードの腕には、強制収容所のサバイバーであることを示唆するいれずみがある(チラッとしか見えないけれど)。2人がいる場所が実は真新しい墓標が広がる墓地であることがわかる。
 映像と音楽がステキ。1970年代のカルト映画でキッチュな映画と言われているけれど、心に残る映画。
 女性が年上の恋愛映画をここまで不思議に描くか。モードは「幸せ」と思い、ハロルドは力をもらう。
 うーん。女としては力が湧いてくると言うべきか。森光子さんと少年隊の東さんのことも思い出す。
 人は、根源的に孤独だから、魅きあうというべきか、恋愛にバリアはないというべきか。
 将来、「自由な老女」(老女という言葉を使うかどうか、おばあちゃんと言うとまた違うのよね)になるべく、これからも修行をしようっと。
                    (福島みずほのHPより一部変更して転載)
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