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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
『ミルク』(ガス・ヴァン・サント監督 アメリカ 2008年)

主演 ショーン・ペン
第81回アカデミー賞主演男優賞をショーン・ペンが獲得。脚本賞も受賞。
憲政記念館で映画議員連盟が上映会を行ったので、見に行った。ハーヴェイ・ミルクの活動家としての最後の8年間を描いている。彼が40歳から48歳で、殺されるまで。

サンフランシスコ市の市政執行委員選挙や国政の下院議員選挙に立候補し、4回目の選挙において、サンフランシスコ市の市政執行委員となる。ハーヴェイ・ミルクは、アメリカ合衆国で初めて、同性愛を公表して当選した公職者である。

私は84年のアカデミー賞受賞ドキュメンタリーを受賞した「ハーヴェイ・ミルク」(ロバート・エプスタイン監督)を80年代の後半、88年頃だろうか、見た。この映画を配給しているパンドラカンパニーの社長である中野理恵さんのすすめで、見た。このドキュメンタリーを当時見られて、本当に良かった。友人中野理恵さんに感謝している。

私は、ハーヴェイ・ミルクの果敢な活動と、そしてゲイであるということで殺されるという現実にショックを受けた。若い男性からミルクに電話がかかるシーンも出てくる。「ありがとう」という電話である。私はこの世界に居場所がなくて、絶望していた人たちが、ミルクの存在に励まされていることに涙が出るような思いがした。同性愛に対するすさまじい憎悪とバッシングが、人々を殺していくのはおかしいではないかと思った。

ゲイ権利運動の高まりとともに、バッシングも強くなっていく。アメリカの各地で、同性愛者権利条約が住民投票によって、次々に廃止されていく。危機感をいだくミルクたち。カリフォルニア州でも、同性愛の教師を解雇できる提案6号が住民投票にかけられることになる。マイノリティである人々が、どうやって多数を説得するか。ミルクは、この提案6号を出そうとする下院議員に対し、論戦をのぞんでいく。どこにでも、どんな形でもいくと。
保守層の極めて多い地域で、しかも提案に賛成する人々が圧倒的に多い集会で、2人で討論をする。ミルクが発言するたびに会場から野次がとび、相手方が発言するたびに拍手がわく。そんな中で、時にユーモアをまじえて、見事に切り返していくミルク。胸がいたくなるようなシーンだ。

性的マイノリティだけでなく、少数者の人権の問題であることが、段々理解されるようになる。カーター元大統領やレーガン元大統領まで反対を表明するようになる。当初の予想に反して、6号は反対で通らない!大喜びのミルクたち!
このキャンペーンの途中で、ゲイパレードの中で行うミルクの演説が感動的だ。自由の女神の台座の言葉や、アメリカ合衆国憲法の法の下の平等が高らかに語られる。私は思わず、オバマ大統領の演説を思い出した。

ところで、ドキュメンタリーの方は、政治活動の部分が圧倒的に多かったが、今度の映画は、私生活の部分もとても良く描かれている。ミルクは、ゲイをカミングアウトしていないビジネスマンのとき、ニューヨークの駅で20歳年下のスコット・スミスと恋に落ち、サンフランシスコに移住し、カメラ店を開店する。
知的でシャープで感性の豊かなスコット。家の中でも、四六時中政治の話しをスコットは嫌がるようになる。選挙の準備中、「もう僕は耐えられない」と家を出て行ってしまう。がっかりくるミルク。

私などもほとんど政治一色になっているので、身につまされる。
ミルクは、次に、政治の話しなど一切できない、むしろミルクに頼り切りの若い男性を恋人にする。うーむ。色々だなあ。
仕事場にも、不安でしょっちゅう電話をかけてくるその若い男性。彼は、ミルクの不在中、淋しくてたまらない。異性愛も同性愛も関係は様々だ。彼がおかしくなっていく。悩むミルク。
激しい政治活動をし、暗殺するぞという脅迫も受けながら、私生活を支えとし、あるいは悩み苦しむミルク。

人間的なものが描かれている。周りの男性、女性たちもすばらしい。実写の本物のミルクのあたたかで、カリスマ性のある笑顔がステキだ。

当時のゲイパレードの様子も心にしみる。
私がサンフランシスコで話しを聞いたゲイの人たちのことも思い出した。ゲイパレードの写真を見せてくれた。
マイノリティとして、この世で生きる辛さと孤独。でも、連帯とパワーで変えていく気持ち。

ミルクの輝ける人生は、マイノリティの人々に、そしてすべての人々に「がんばれよ」と言ってくれている。
                    (福島みずほのHPより一部変更して転載)
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