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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
『Good Night and Good Luck』(ジョージ・クルーニー監督・共同脚本 アメリカ 2005年)

 主演デビット・ストラーザン
 いい映画。
 シンプルで力強く、力が湧いてくる映画。白黒の画面とマッカーシーの当時のフィルムがきちんとマッチして、自由、表現の自由、正義という根本的なことを考えさせる。
 1950年2月に、ジョセフ・マッカーシー上院議員(1908年〜1957年)が、「アメリカ政府内部に多数の共産主義者がいる」と演説。これに端を発して扇動的な反共キャンペーンが広がっていく。
 具体的な根拠も立証もなく「共産党員だ」とされれば、たとえば、審問を受け、職を追われ、自殺をしていく。多くの人たちは、恐怖やターゲットになりたくないという思惑から沈黙し、また、難を逃れるために仲間を売ったりした。
 私が昔聞いたのは、図書館の本の貸出しカードから、「あやしい」と目をつけていくというものである。
 この映画は、1953年から1954年の間、ニュース番組のキャスターであるエド・マローがこれに対して、チームとともに敢然と向かい、きちんと報道をして、流れを変えていくことを描いている。
 空軍の人間が、「家族が共産党の集会に参加した」という告発によって解雇される。そのことについての番組放映前に空軍が抗議にくる。本人が出席して何が問題か、家族が出席して何が問題かとまず思うけれど、ポイントは、不確かな情報、場合によってはデマででっち上げられて、本人には、その告発と対決することもできないということである。
 結局デマを言われっ放し。
 誹謗中傷され、「非国民」呼ばわりされ、ボロボロになっていく。
 法も適正手続もへったくれもない。
 こんな「暴風雨」が吹き荒れているときにどうしたらいいのか。
 そんなことについてのヒントをもらいに実は映画を見に行った。
 問題の解雇の理由について、きちんと検証を加えていく。マッカーシーの手法についての批判もその後の番組でする。「マッカーシーの反論も期待する」とさえ述べる。
 マッカーシーは、3週間の時間の猶予をもらい、番組のなかで反論する。
 エド・マローの個人攻撃をするのだ。
 つまり、エド・マローは、テロリストの団体の会員である。20年前ソ連の宣伝をしていた、モスクワへ行ったことがある…といったことである。
 これに対して、きちんと後日反論するマロー。
 緊迫するし、社長は、経営の観点からも不安も口にする。
 個人攻撃をされたときにそれをどうくつがえすか。
 同僚のキャスターは、マッカーシーに攻撃され、自殺してしまう。
 決然とするマロー。
 冷静にきちんと話すマロー。
 マローの私生活や個人的な悩み、職場の裏切りが語られるのではない。スタジオという職場が切り取った形で緊迫の場面を展開していく。理念的なシンプルな構成が変にいろんなものを織り込まない分ストレートにメッセージが力強く伝わってくる。
 私は、この映画を見る前は、「Good Night and Good Luck」とマローは、番組の最後に笑っていうのかと思っていた。しかし、画面では、むしろクールにニヒルにスマートに「Good Night and Good Luck」と言う。
 彼の品格や確信が結局嵐を変えていく。
 もちろん英雄物語ですまそうというのではない。何百、何千、何万というマローがいたからこそ状況が変わったのだ。
 ただ、状況を変えるきっかけを周到にきっちりやらなくてはならないのだ。
 マローが、数年後スピーチをしている。
 そのなかで一番素晴らしいと思うのは、「歴史は自分の手で築くものです」というものである。
 私もこの言葉をかみしめたいし、一人でも多くの人がこのことに共感すれば、共謀罪、教育基本法改悪法案、国民投票法案、米軍と自衛隊の一体化、憲法改悪が吹き荒れる今の政治を変えることができるだろう。
 それにしてもNHKで政治家の番組への介入を告発した人たちが配転、出向になったが、どうしているだろうか。
 勇気を持って自由のためにがんばろうとしている人、ターゲットになっている人などをどう励ましていけるかということにも心を砕きたい。
 この映画は身につまされる私にとってリアルな励まされる映画である。
 多くの人が、特に、ジャーナリストが、もう一歩大きく踏み出し、また、踏みとどまることでこれからの歴史が変わる。
 私自身この映画が取り扱っている問題を小さな規模で日々ヒリヒリと直面し、苦闘し、多くの人に励まされている。
 これからもいろんな局面にぶつかっていくだろう。そんなときに、この映画を励ましとしたい。
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