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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
「ガス灯」(監督ジョージ・キューカー、主演イングリット・バーグマン、シャルル・パワチエ、1944年、アメリカ合衆国、)

 えっ、これってドメスティック・バイオレンスの話じゃないと思った。女の人の精神的な追いつめられかた、孤立のさせられかた、「お前はダメな女だ」、「落ち度がある」、「何考えているのだ」、「精神的におかしい」と夫に思わせられて、自分を責めていく。女の人が彼女の愛している人によって精神的に追いつめられていく。自分自身の記憶も夫に「お前の幻想だ」と言われ、自分で否定していく。メイドさんとすら話をせず、外出もめったにしない。夫以外と交流をもたず、その夫にじわじわと追いつめられていくのだから、おかしくなって当然だ。彼女は「まとも」なのに精神的に病んでいるとされていく。
 1944年の映画なのに本質的なことを描いている。
 おいつめられ、精神的に不安定になっていたポーラ(イングリット・バーグマン)が、真実を知って夫と対決していくところも今風だ。すぐ次のロマンスが発生するところも。
 ポーラの叔母は世界的に有名な歌手である。ポーラは両親を早くなくしたためにこの叔母に育てられた。しかし、この叔母は 10年前に何者かによって自宅で殺害された。階段を降りてきて、発見したのはポーラである。この邸宅に住むことに恐怖を感じたポーラは家のなかをそのままにして、別のところに住んでいた。大恋愛の末、結婚し、夫の望むこの邸宅で思い切って10年ぶりに暮らし始める。
 奇妙なことが起こり始める。
 夫に特別なブローチだと言われ、大切にしようと思っていたブローチをすぐなくしてしまう。プレゼントしてもらったイヤリングやブローチが大事であればあるほど、高ければ高いほどなぜかすぐ落としてしまうわたしとしては身につまされる。壁にかけてあった絵がなくなってしまう。夫の叱責。夫の時計がなくなる。その時計がなぜかポーラのバッグからでてきてしまう。夫に指摘され、ふるえるポーラ。
 夜中に物音がし、ガス灯の光がおかしくなる。
 実は、夫は、叔母にとりいり、宝石を盗むために殺していた犯人だったのだ。宝石はそのときとれなかった。ポーラに近づき、宝石を自由に探すためにポーラと結婚し、一緒に暮らす。彼女を思いどおりに繰り、精神病院に追いやろうとしていたふしがある。
 シャルル・ポワチエの端正な顔が怖い。わかんないよね。いかにも怖い夫なんかじゃないんだもん。
 「ぴあ」の映画の本のなかには、この映画についてこうある。「犯人がポーラを発狂寸前にまで追いつめていく心理的サスペンスが見もの」本当にその通り。そして、わたしは、今この映画を見て、妻を自分の思いどおりにコントロールしようとするドメスティック・バイオレンスの本質を1944年に描いていることに感激した。
 アガサ・クリスティーの推理小説にでてくるミス・マープルを図々しくしたような女性が登場するのもご愛敬か。サスペンスとしても楽しめる。
 昔の名作を今の眼で見直すといろんな発見があるかも。

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