判例 女友だち 映画ウォーキング 情報BOX わがまま読書 リンク おたより欄
映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
『マイノリティ・リポート』(スティーブン・スピルバーグ監督/2002年/アメリカ)

 2054年のワシントンDCが舞台。ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は犯罪予防局(プリ・クライム)を率いる主任検事である。同局は3人の超能力者(通称“プリコグ”)の予知能力を使って、殺人事件を事前に把握し、実際に事件を犯す前に犯人になるはずの人間を逮捕して、収容してしまう。将来の殺人事件で逮捕してしまうのである。
 このようなシステムのおかげで過去6年間殺人事件は発生していない。
 うまくいっているように見えた。
 しかし、問題が起こる。ジョン・アンダートン自身が殺人を犯すと予言されてしまうからである。なぜそうなるのか、システムに欠陥はないのか・・・。逃げながら真実をつきとめようとするジョン。
 ジョン自身、3歳の自分の息子とプールで遊んでいたときに、目をはなした隙に息子は誰かに誘拐され殺害されてしまうという過去を背負っていた。ジョンが、犯罪予防局で一生懸命働いているのはそういう事情があったのだ。
 ジョンは、超能力者の予言どおり殺人を犯すのか、犯さないのか・・・。
 予告された未来は変えうるのか。
 この映画は、いろんなことを提起しているけど、身につまされるというか、せっぱつまって感ずることができたのは、実は国会で議論されていることは、この犯罪予防、将来の犯罪あるからである。
 まず、成立してしまった武力攻撃事態法(有事立法3法の1つ)は、武力攻撃予測事態を問題としている。武力攻撃ではなく予測事態である。また、発生していなくても「予測」として作動していく。
 そういえば、ブッシュ大統領は、イラクに大量破壊兵器がある可能性があり、それがテロリストに渡る可能性があり、それがアメリカを攻撃する可能性もあり、という3つの「かもしれない」を積み重ねて、イラクを攻撃したのである。現在までに大量破壊兵器は使われず、また、使われず存在しているということについて情報操作がなされていたのではないかとアメリカとイギリスの議会で大騒動になっているのである。
 こんなの「作られた虚偽の未来」ではないか。
 そして、今国会で成立したものに、心神喪失者処遇法がある。かつて重大な犯罪を犯したものを国会の特別な精神病院に収容する。そして、精神科医と裁判所の合議で、同種の犯罪を犯すかどうかの可能性によって、退院させるかどうかを決めるというのである。これは、強制隔離、強制入院であり、やっぱり保安処分である。
 将来同種の犯罪を犯す可能性があるかどうかをどうして決めることができるのか。未来は誰にもわからない。
 「共謀罪」も予備罪でも実行の着手(未遂)もない段階で処罰しようとするものである。国会に係属中の法案であり、500以上の犯罪が問題となる。相談をして実行されなかったものなんていっぱいあるのだろう。未来は変えられるものである。
 アメリカは9.11テロ以降、テロリストである疑いのある外国人は、裁判所の令状なくして一定期間拘束できるという法律を成立させてしまった。
 「予防犯罪」といった概念がどんどん広がっている。
 そして、それと同時に、監視カメラを含めた監視社会が、アメリカで、イギリスで、日本で、進行している。
 「マイノリティ・リポート」のなかで街中に監視カメラがあることが描かれている。ポイントは眼のこう彩である。指紋はとらないとダメだが、眼のこう彩は人が通るだけでチェックできる。トム・クルーズは、このこう彩チェックをかいくぐるために、手術を受け眼球を変える。顔の整形なんかではなく、もう眼球を変えるのである。「別人」になるためにヤミの手術請負人がいる。
 これはとってもリアルであった。
 成田空港などでもこのこう彩チェックの導入が議論されている。
 参議院では20台、衆議院では16台、最新監視カメラが設置されている。歌舞伎町みたい。1番問題なのは、請願、デモにやってきた人たちのチェックができることである。これで誰がデモにやってきたか1人1人チェックできてしまう。
 「犯罪予防」と「監視社会」が手をたずさえてがんじがらめで進み、そのなかに「謀略」がまぎれ込むと特に、とんでもないことになることのリアルさが映画のなかで描かれている。
 犯罪を憎み、犯罪をなくしたいと思う被害者の気持ち(トム・クルーズはそのために、プレ・クライムで働くようになった)、被害者感情の癒しもよく描かれていると思う。
 映像もシャープで、変な言い方だけどきれいだ。
 そして、私が1番感銘を受け、勇気づけられるのは「未来は変えられる」ということである。
 人間は力を持ち、主体的に変えられるのだというメッセージに、政治の世界で働く私は涙が出るくらい(?)励まされる。
 私は「ロードオブザリング」においても「未来は賢者にもわからない」という賢者の言葉に励まされたものだ。
 そういえば、「ターミネーター3」の映画の宣伝の言葉も「未来は変えられる」だ。
 「未来は変えられる」と自分を励まし続けないと「予告された殺人の記録」であるアメリカのイラクへの武力攻撃などで本当に傷つく。国会のなかで、予定調和的に、審理される有事立法3法、イラク新法などにも頭にくる。
 時代の大きな流れのなかで、人々がシニカルにあきらめないように、「未来を人は変えられる」と私は言いたい。

Copyright(C) 2001 GAL. All Rights Reserved.
 
TOP BACK