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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
『ジャンヌ・ダーク』(ヴィクター・フレミング監督 アメリカ 1948年)

主演イングリット・バーグマン、ホセ・ファーラー
数年前に見たミラ主演のリック・べッソン監督の「ジャンヌ・ダルク」も良かったけれど、このバーグマン主演の1948年に作られた「ジャンヌ・ダーク」は、もっともっと良くて、もっと正当に評価されてもいいと思った。

フリーになったバーグマンが作りたかった映画である。
彼女がなぜ作りたかったかわかるような気がする。
この映画は、酷評された。演技がオーバーでひどいとか、バーグマンに向いていないとか言われた。
「カサブランカ」の美貌のバーグマンの涙に感動した映画評論家の人たちは、主張するバーグマンに違和感を感じたのではないか。
この映画は、ジャンヌ・ダークの裁判記録をもとに作られている。だからむしろ争点が良くわかる。
彼女の起訴事実は、2つである。
一つ目は、神の言葉を直接聞いたと言っていること。
教会を通じて聞かなければならないのに、直接聞くと言うことは、あり得ないことなのである。宗教改革の前の話である。
二つ目は、男装をしていることである。
この映画は、女官たちが多数登場するので、ジャンヌとの対比がものすごく出ている。ジャンヌは男装というか、女性の格好をしておらず、パンツルックである。髪型もすっきり。これが許されなかったのである。

ジャンヌは、教会牢に入れてくれるよう主張し、かつ、女性の看守をつけてくれるよう主張する(現代的である)。それを認めてやると言われ、だまされてサインし、火あぶりとなる。
教会牢には入れられず、女性の看守はつかない。

ひどく現代的であり、しかもバーグマンは、とてつもなく力強く、これまた現代的。がっちりしており、体格のいいバーグマンは、りりしく、力強い。
「カサブランカ」の撮影のとき、ハンフリー・ボガードは、背の高いバーグマンとあわせるために、台に乗らなければならなかったのである。今なら女性が背が高くてもいいじゃないとなるが、当時は、それはダメだったのである。
スウェーデン女性であったバーグマンは、映画で活躍していたけれども、イタリア人で映画監督であったロッセリーニに走り、夫と別れ、バッシングを受け、ロッセリーニの映画に出た。また、戦場カメラマンであったキャパの恋人のときもあった。
キャパの撮った空襲で投げ出されて、剥き出しになって空き地にあるバスタブに冗談で服のまま横たわるバーグマンの写真を見たことがあったっけ。一緒に空襲の跡を歩いていて、バスタブを見つけて、冗談で横たわったという感じの写真だったように思う。
強い正直な女性である彼女は、ジャンヌ・ダークの映画をこんなふうに撮りたかったのだ。
しかし、当時早すぎて、多くの人たち、恐らく映画評論家の人たち(映画評論家は、圧倒的に男性が多かっただろうけれど)は、理解できなかったのだ。
きれいきれいだけではないバーグマンは、信念や勇気や使命を持ったジャンヌを演じたかったのだと思う。
今見ると、とてつもなく今風で、かっこいい。

この映画を見ると、昔、昔、酷評された映画を女たちの眼で見直すこと、発見すること、再評価をすることの必要性を強く感ずる。
これは、映画だけではなく、文学や絵、学問などにも共通するけれど。
すごくいいよって、今は亡くなっているバーグマンにも言ってあげたい気がする。
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