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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
「誰も知らない」(是枝裕和監督・日本・2004年)

 2004年カンヌ国際映画祭最優秀賞受賞作品。
 巣鴨子供置き去り事件というものがあった。
 豊島区西巣鴨のマンションに兄(14歳)と妹(7歳、3歳、2歳)3人が置き去りにされ、3女が死亡、長女と2女が栄養失調の状態で保護された。昭和63年7月23日、子どもを置き去りにした母親(40歳)が保護責任者遺棄罪で逮捕され、東京地検は、母親を起訴した。
 起訴状などによると、母親は昭和62年9月からマンションに4人の子どもたちと暮らしていたが、昭和63年1月ごろ、4人を置き去りにして男性と同棲、長男を時折呼び出したり、郵送などで月平均7、8万円の金をわたしていた。
 1989(平成2)年に、兼松左知子さん、若穂井透さんと一緒に、「女・子供の視点から少年事件を考える」(朝日新聞社刊)という本を出したことがある。
 そのなかでこの巣鴨事件を検討したことがある。
 子どもを捨てた鬼のような母親といわれたけれどそうなのだろうか。
 子どもたちは、みんな出生届が出されておらず、戸籍がなかった。
 確かに、ひどい話かもしれない。
 しかし、毎月お金を送り、すべてのことを先送りにしていたその女性が、なぜ子どもたちを登録しなかったのだろうか。
 よくわからない。
 めんどくさかったのか、いつかすっきりしたかたちで、解決することを夢見ていたのか、現実に直面していなかったのか、見栄っぱりだったのか、逃げていたのか、よくわからない。
 ただ鬼のような母親とだけ言われるのは、ちょっと違うような気がした。
 この映画は、この事件を題材にしている。
 わたしにとって救いだったのは、この映画が、いろんな人を断罪しているのではないことだった。
 一定の環境のなかで、とにかく生きていかなくてはならない子どもの切なさが、描いてある。
 この映画を見ながら、淡々とでもたまに淋しそうに、とにかく生きているいろんな子どもの顔が、眼に浮かんできた。
 断罪をしたり、裁いたり、糾弾したりではなく、人を、特に子どもを描いていることに、切なくなった。

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