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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
「華氏911」(マイケル・ムーア監督/アメリカ/2004年)

 8月29日、マイケル・ムーア監督の「華氏911」を見に行った。場内は、笑い声もよく出るし、わたしもおおいに笑ったけれども、ひどく身につまされ、改めてがんばるぞと思った映画だった。
 マイケル・ムーア監督の映画は、「ボウリング・フォー・コロンバイン」「ロジャー・アンド・ミー」「ザ・ビッグ・ワン」などの映画を見てきた。
 そのなかでもこの「華氏911」は、面白く、そして、身につまされるものだった。
 全く知らない映像が、たくさん出ている。
 9・11の攻撃が起きた直後、ブッシュ大統領は、小学校の授業参観で、そのまま本の読み聞かせの教室に、ボーと座ったままいる。一体この人は、なんなんだろうという感じである。
 イラクで、傷付く人たち、殺される子ども。CDで、いわゆるノリのいい音楽をかけ、ヘルメットをかぶりながらも聞けるようガンガン音楽を流しながら、イラクの人たちを殺していく米兵のインタビューがある。しかし、後の方で、「魂の一部が死んでいく。魂が死なないと、人を殺したりできないよ」とインタビューで語る米兵も出てくる。
 マイケル・ムーア監督の故郷フリントで、海兵隊の2人組が、町を歩く若者に「海兵隊にこないか」と声をかけつづけていくシーンが出てくる。「資格がとれるよ」と言ったりしている。カモを捜す人たちみたいだ。
 それに対して、国会議員のなかで、自分の子どもをイラクへ送ったのは、一人しかいない。マイケル・ムーア氏は、国会議員に対して「子どもをイラクへ送ることを考えないのか」と直撃インタビューをする。ギョッとしたり、何言うんだという感じだったり、理解できないという感じだったり、無視する国会議員たち。
 「持てる者たちが石油利権のためなどに戦争をし、就職口がなく、働く場がない地域の若者が軍隊へ行く」という戦争のための構造もみごとにあばき出される。
 「ブッシュにだまされるな」「ひどい戦争で、傷つくのは、イラクの人びとでありアメリカの若者じゃないか」というメッセージは、まっすぐ伝わってくる。
 身につまされるというのは、政治家たちなどの身勝手さやインチキぶり、癒着が、厚顔無知が、どんどん描かれるからである。
 日本だって、このひどい構造を支持し、このアメリカの政治や経済をしっかり支え、自衛隊をイラクへ送り、多国籍軍への参加まで決めている。イラクへの「復興支援費」5500億円の支出を決め、国民の税金を使っているのである。
 日本だって、共犯なのだ。そんな政治のなかにいるのだから、マイケル・ムーアの爪の垢でもせんじて飲んで、笑いのめし、打ちのめして(?)、いかなければならない。
 9・11事件の後、アメリカで、反テロ愛国法が、あっという間に成立してしまう。
 以前から、みんなで問題だとして、勉強をし、アメリカ自由人権協会なども問題にしていた法律である。テロリストと思われる人たちは、裁判所の令状なくして、身柄の拘束ができるといったひどい内容である。
 この映画のなかでもこの反テロ愛国法が、とり上げられている。このひどい法律は、なかなか日の目を見なかったが、9・11をいわゆる契機として、あっという間に、深夜提出され、次の日、成立してしまった。国会議員は、誰もこの法律をしっかり読んでいないというくだりが出てくる。何ということ!
 マイケル・ムーア監督は、そのことに怒り、アイスクリームの販売車を国会のまわりで走らせ、国会議員が読んでいないのであれば、聞かせてやるとガンガン読み上げる。日本では、国会のまわりは、規制があり、こんなことすらもできないのだ。
 この映画は、現実に対して怒っているけれども、政・官・業とメディアの「強者の、強者による、強者のための政治」をひっくりかえそうという愛のメッセージを送っている。
 ええい、日本でもがんばるぞと思った次第である。
          (福島瑞穂FAX通信および同HPより転載)

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