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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
「父と暮せば」(監督:黒木和雄/2004年/日本)

 広島で原爆にあい、父親や多くの友人たちを亡くした福吉美津江は、「幸せになってはいけない」と思っている。父子家庭で育っていた彼女は、父を亡くし、一人で生きている。恋愛をしてはいけないと思いこんでいる彼女の恋愛を応援すべく、亡くなっている父親が登場する。亡くなった父親は、立ち止まり、逡巡する娘を励まし、説得しようとする。その2人の話のなかで、広島の被害、思い、当時の状況、今の気持ち、いつ原爆症が出てくるかということを恐れる気持ち、亡くなった人たちへの思いなどが出てくる。
 もともと井上ひさしの舞台劇だったので、多くの日本映画のように、情景描写で表現し、セリフが少ない、ということはない。2人の会話、思いやりにあふれた2人の心情が吐露されていく。ある意味では、美津江のなかでの2つの考え方の葛藤、対話ということもできる。戦争の意味、被害、原爆の問題、どれだけの人がそのことをひきずって生きていかなければならないのか、生き残った人たちの苦労や思いが現われてくる。
 原爆の問題点についてはある程度知っていると思っていたけれど、映画を見て、まだ本当にはわかっていなかったのだと思った。死者何人と言われているけれど、その一人ひとりにかけがえのないものがあり、また生き残った者たちのなかにも一人ひとりの思いがあるということを改めて実感をした。
 宮沢りえさんのみずみずしさは素晴らしい。おとうさん役の原田芳雄さんのどこかおかしい演技も胸をつく。原爆を離れて、親と子どもの思い、愛情という点でもうまく描けている。
 ところで、相手を思う会話ということでいうと、先日、友人と「冬のソナタ」のことが話題になった。わたしのまわりには、「冬のソナタ」にはまって(?)いる人が、一杯いる。
 彼女は、はまっているというよりも、分析しているという感じだが、彼女がいうには、「冬のソナタ」の一番の特色は、「会話」だそうである。相手が一体何を考えているのか、何を感じているのか、そのことを必死で考え、会話をかわす。日本のドラマには、そういうことがないので、それが新鮮なのではないかというのが、彼女の分析である。
 ふーん。
 でも考えて見れば、きちんと向き合って、あふれるような愛情のもと、情緒的なものも含めて、相手をおもいやり、会話をかわすなんていうのは、ありそうで、意外と少ないのかもしれない。
 ヨンさんも、ドラマのなかでよく泣く。ヒロインのほうが、もっと泣くけれども。
 韓国の男は、普通は、泣いてはいけないそうだけれど、愛のためには、泣いてもいいそうである(そうなのかなあ)。純愛のために泣いてくれる男に、日本の女たちは、飢えているのかもしれない。でも、そんな視点からみると、この映画は、まさに、人のことを思う気持ちにあふれている映画である。二人の会話のなかに、お互いの存在にたいするあふれる愛情がある。あふれる思いと戦争反対の気持ちが、せつせつと静かに湧いてくる映画である。イラク戦争支持をし、憲法を変えようとしている与党の国会議員にこそ静かに見てもらいたい。

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