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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
「ハウルの動く城」(宮崎駿監督/2004年/日本)

 わたしは、宮崎監督の大ファンで、国会の事務所には、人づてで手にいれた宮崎さんの色紙が飾ってある。

 「太陽の王子ホルスの大冒険」「長靴をはいた猫」「アルプスの少女ハイジ」「未来少年コナン」「ルパン3世カリオストロの城」もぜーんぶ見ているし、レーザーディスクもある。
 その後の作品も全部見ている。
 「風の谷のナウシカ」をはじめ、宮崎監督の作品にどれだけ励まされたことか。生きる力と立ち向かう勇気を一杯もらった。
 「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」も「となりのトトロ」も大好きである。

 「ハウルの動く城」をワクワクして、見に行った。

 この映画の主なテーマは、戦争と純愛である。
 まず、戦争について。
 今の時期に「戦争反対」を打ち出すことの意味は、本当にある。町が爆撃で赤く燃えるシーンがある。また爆弾をたくさん積んだ戦闘機が数多く空を飛んでいくのをハウルとソフィーが見上げるシーンがある。「紅の豚」のテーマを思い出す。ソフィーはハウルに聞く。「敵?味方?」それに対してハウルは答える。「どっちだって同じだよ」そう言われればその通り。敵であれ味方であれ人を殺すことに変わりはないのである。
 イラク戦争やたくさんの戦争を思い出した。2004年、映画を作るのに「戦争反対」のテーマを打ち出したことは、「やっぱり宮崎駿さん」と思った。
 ところで戦争の描き方が変わった。町が赤くなるシーンはあるけれど、傷つく市民は具体的には描かれなかった。
 「残酷だ」と評されたとも言われている「もののけ姫」の戦いのシーンとは全く違う。アシタカが弓を引き、相手の体の一部が吹っ飛ぶというシーンがあった。だからアシタカというキャラクターにみんなが感情移入できなかったと言われているが、そうだろうか。人が傷つくことを描かなければ、本当に被害はわからない。
 町が遠くで赤く燃えるシーンは、イラクの町が燃えるシーンがテレビで放映されるように、私たちから遠い。
 王様と魔法使いが決意をすれば戦争が終わるかのように、戦争が描かれている面がある。しかし戦争を終わらせるためには、長い時間や交渉が必要である。そのことについてのリアリティーがすこし足りないのではないか。

 二つ目は、純愛である。
 「世界の中心で愛を叫ぶ」「冬のソナタ」の大ヒットも純愛ブームによっているのだろう。
 戦争とテロと政治家の汚職。悲惨な事件が毎日のように起き、企業の不祥事のたびに社長が頭を下げる。
 そんな中で「純粋に人を想う」ということが、一番大切で、一番大事だと人が考えるのは当たり前だ。私も「あと余命三ヶ月」なんて宣言されたら、仕事や活動はやめて、好きな人との時間だけに使いたい。
 純愛ブームは分かるよと言いつつ、はて?と言いたい。
 ハウルは、かっこ良く美形で、がんばる所と優しい所と気弱な所とデモニッシュな所が混在している。
 しかし、私はソフィーがなぜハウルに惚れるのか、実はよく分からなかった。
 また、ソフィーは「私って美人じゃないから」と言う。冗談なのかもしれないけれど、宮崎駿監督の女性キャラクターの中では、初めてではないだろうか。「トトロ」のおねえちゃんにしろ、メイにしろ、必死である。おねえちゃんはメイを捜すときに全力で走る。
 ナウシカにしろラナにしろ、クシャナ王女にしろもののけ姫やラナリス、ハイジにしろみんなひたむきである。
 「私がはいつくばって礼を言うと思っているのか」と言い放つ風の谷の「風の谷のナウシカ」のクシャナ王女、そして「もののけ姫」のタタラ場のエボシ御前にしろ気丈な女である。こんな女性がこの映画にはいなくなってしまった。
 「魔女の宅急便」のキキも、「耳をすませば」の雫も自分の能力などについて悩む。
 でも自分の容貌について言う女の子はいなかった。そんなことに気をとめず、みんなひたむきに生きていた。少し卑屈になったというか、少し通俗的になっていないかな。それが少し残念な所である。

 ソフィーはせっせと掃除をする。それが彼女の仕事である。なんか一生懸命掃除をしていれば誰かが認めてくれるという構図のようにも思える。
 かかしにキスをするとあれあれ隣の国の王子様になる。これはひきがえるが愛する人にキスをされると元の王子様になるという子どものときに読んだ童話を思い出した。ひきがえるやかかしのままでもかわいいじゃない。
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