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映画ウォーキング 群を抜いておもしろい映画評です。名作と言われる映画もジェンダーの視点で切ると・・・
『トウキョウソナタ』(黒沢清監督 日本 2008年)

 主演:香川照之、小泉今日子
 とんでもないおとうさんである。どこにでもいそうなおとうさん。身につまされるものもあり、笑ってしまうところもある。また、今の時代の悲しさや問題点をうまく映像にしている。今の日本は、いろんな問題がありながら、映画にはなかなかならない。映画にするには、難しいのかなあと思っていた。だから、この映画は、嬉しかったし、面白かった。
 おとうさんとおかあさん、そして、大学生の息子と小学生の息子の4人家族。2階建てのマイホームに住んでいる。
 おとうさんは、会社の総務課長。しかし、企業が、中国に進出するに際し、総務課長として、リストラにあう。
 突然の失職。
 しかし、家族には、リストラされたことをどうしても言えない。毎日、会社に行くふりをして出かける。ハローワークに行って、面接を受けると、「今までと同じ条件のものは、絶対にありません。」と言われる。面接を受け、「何ができますか?」と言われ、総務課長だった彼は、「人をまとめること」などと言った漠然としたことしか言えない。

 ワンマンなおとうさん。
 小学校の息子は、実は、ピアノが習いたい。
 しかし、おとうさんは、「ピアノなんて」と大反対。聞く耳をもたない。
 こっそりピアノを習い始める息子。
 才能はあるのだ。
 習っていることがバレてしまう。
 母親は、「習わしたらいいじゃない。」と父親に言うが、頑固な父親は、納得しない。
 「いったん駄目と言ったことをくつがえしたら、親の権威がなくなる。」と愚かな、形式にこだわる。
 「なぜウソをついていたのだ。」と息子に対して、烈火のごとく怒る。
 「ウソをつくことが許せない!」と怒り、息子を殴ったりする。
 ここで、映画を見ている人は、「おとうさん、あなただって、何ヶ月も家族にウソをついているじゃん!」と突っ込みたくなる。
 まあ、父親の権威というのを振りまわすおとうさんなのである。

 大学生の息子は、大学を中退し、米軍に日本人として、志願をしていく。イラクに日本人として、米軍に参戦をしていく息子。
 心配をする母親。

 出かける前に、バス停まで、送っていく母親。
 息子と話をする。
 息子は、母親に言う。「離婚をしたら。」
 一瞬の間があって、母親は言う。「おかあさん役も悪いことばっかりではないのよ。」と少し笑って、いたずらっぽく言う。

 うーん。
 夫婦の関係も、おとうさんの問題もみ〜んな家族に、子どもたちにわかられちゃっているのだ。

 父親は、大きなスーパーで、清掃の仕事につく。このことを家族には、内緒にしている。

 このスーパーのトイレの個室で、掃除をしている最中に、封筒にはいった札びらが落っこちているのを発見。
 こっそり、トイレの個室から、外を伺う香川照之。
 このときの、一見無表情の顔が面白い。
 「誰か外にいないかな。」と。

 香川照之は、ダステン・ホフマンみたい。
 うまい。

 これから、また、話がころがっていく。

 母親の悩みも深い。
 ほっとかれているわけだから。

 どこにでもあるような、どこにもない物語。でもやっぱりどこにでもあるような家族の物語。

 小学校の教室での子どもたちの態度とがきっぽい担任の態度もこれまた今風だ。

 今の日本には、様々な問題があり、どれもこれも大変なことが多い。
 それをあれでもか、これでもかと描く必要はないけれど、映画は、やさしい母親、やさしいおばあちゃんを描くというものばかりではないだろうという気がしていた。
 家族の本当のことなんて、外には見えないのだ。
 電車に乗り、背広をきているサラリーマンだって、内面がどうなのかということは、外からは、伺いしれないものがあるかもしれないのだ。

 リストラや自殺やホームレスやハローワーク。
 面接に行った若い面接官から、軽くあしらわれる中年のサラリーマン。
 サラリーマンの現在や悲哀、家族との関係を描く映画として、面白かった。

 家族の描き方としては、母親の悲しみと怖さを描いていた今年の映画は、「歩いても 歩いても」だった。
 そして、この「トウキョウソナタ」は、今、現在の家族の問題を描いた意欲作だ。
 それにしてもおとうさん役の香川さんは、最高で、笑ってしまった。
                    (福島みずほのHPより一部変更して転載)
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