1−2011.8.24
民法900条4号但書の婚外子の相続分規定につき、法令違憲とした例
[裁判所]大阪高裁
[年月日]2011(平成23)年8月24日決定
[出典]判時2140号19頁
[事実の概要]
被相続人(父)は平成20年12月に死亡し相続が開始した。相続開始時、被相続人には妻Y1と4人の子(X、Y2、Y3、Y4)がいた。子のうち、Xは婚外子(嫡出でない子)、Y2ないしY4の3人は婚内子(嫡出子)、である。婚外子が「抗告人」、妻と3人の婚内子が「相手方(被抗告人)」である。
抗告人の出生時、被相続人と抗告人の母Aは事実婚の状態にあった。その後、被相続人はBと婚姻し離婚、Cと婚姻しY2、Y3、Y4が出生したがCと離婚、その後Y1と婚姻した。原審の家庭裁判所は民法900条4号但書に従って、婚内子と婚外子の相続分を2対1とする決定を出した。抗告人は、これに対し、本件規定は、憲法14条1項、13条及び24条2項に違反して無効であると主張して、即時抗告を申立てた。
[決定の概要]
「当裁判所は、本件規定は、法律婚の尊重という立法目的との合理的関連性を欠いており、憲法14条1項、13条及び24条2項に違反して無効であると判断する。・・・
被相続人が死亡した平成20年12月○日を基準に考えると、後記各最高裁判例における反対意見や一部の補足意見が指摘するとおり、平成7年決定以後、法制審議会における相続分平等化等を内容とする答申、我が国における婚姻、家族生活、親子関係における実態の変化や国民意識の多様化、市民的及び政治的権利に関する国際規定約28条1項により設置される委員会の意見、諸外国における国際的な区別撤廃の推進等、国内的、国際的な環境の変化が著しく、相続分平等化を促す事情が多く生じているといえる。なお、上記国籍法に関する最高裁判決により国籍取得に関する区別が違憲とされ、戸籍や住民票において嫡出・非嫡出を区別しない表示が採用されるようになり、児童扶養手当法施行令が改正されるなど嫡出子と非嫡出子とを区別して取り扱わないことが公的な場面において一般化しつつあるともいえる。その他、抗告人が指摘する条約の規定等をも考慮すれば、本件の相続開始時においては、法律婚を尊重するとの本件規定の立法目的と嫡出子と非嫡出子の相続分を区別することが合理的に関連するとはいえず、このような区別を放置することは、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えているというべきである。」として、婚内子と婚外子の相続分を等分として遺産分割の決定をした。
[ひとこと]
最高裁判所に対する特別抗告はなされず、確定した。1995(平7)年7月5日の最高裁判所大法廷による合憲決定以来、公表裁判例で、民法900条4号但書の法令違憲を述べたもの判例初めてである。東京高判平22.3.10が適用違憲と判断していた。同年最高裁大法廷に回付された事案があったが、2011(平23)年3月9日、当事者に和解が成立したとして、最高裁に却下されている。
|