判例 その他
5−2007.5.31
婚外子の出生届につき、「嫡出でない子」の欄にチェックせずに提出し、不受理となった場合において、例外的に職権で、当該子の住民票を作成する義務があるとして、当該子の住民票の記載をしない処分を取り消し、住民票を作成するよう命じた事例
[裁判所]東京地裁
[年月日]2007(平成19)年5月31日
[出典]判時1981号9頁 判タ1252号182頁
[事実の概要]
A及びその両親である原告ら(婚姻の届出をしていない)が、父である原告BがAの出生届出に当たり、「嫡出でない子」という表記を強制されることを回避しようと試みたところ、当該出生届が不受理となり、これを理由に住民票の記載をしない処分をされたとして、右処分の取消を求めるとともに、Aの住民票の作成の義務付け等を求めた。
[判決の概要]
「出生届が受理されなければ、どのような場合であっても住民票を記載してはならないということについてまでも言及しているとはいえない。・・・・差し当たり問題となり得る行政手続において、原告子のように出生した子の住民票の記載が行われないならば、代替手段として、その手続の都度必要な申出を行い、また、要求に応じて居住関係を証明する必要な手段を講じなければならないことになる。・・・・こうした日常の社会生活の様々な場面における不利益の累積は、市民生活上看過できない負担ということができ、被告による上記主張はこのような負担の問題には何ら応えていない。さらに将来的なことではあるが、出生した子が選挙権を行使し得る年齢に近くなれば、重要な基本的な人権である選挙権の行使の前提としての選挙人名簿に登録されるため、住民票が作成されるべき必要性は極めて高くなり・・」として、「これらの事情を総合すれば、世田谷区長は、本件処分時において、例外的な場合として、原告子の住民票の記載をすべきであったにもかかわらず、形式的に、出生届が受理されていないことを根拠として住民票に記載しない処分に至ったことは、その裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであって違法である。」とした。
[ひとこと]
判例評釈 村重慶一 戸籍時報623号66頁
 
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