判例 その他
5−2013.9.26
出生届書に嫡出子・嫡出でない子の別を記載すべきとする戸籍法49条2項1号につき,事務処理上不可欠の要請とまではいえず憲法14条1項に違背しないとしたが,補足意見が,しかるべき見直しの検討が行われることが望ましいとした例
[最高裁2013(平成25)年9月26日第一小法廷判決 民集67巻6号1384頁、判時2207号34頁]
[事実の概要]
上告人は事実婚夫婦であるが,出生届において,嫡出子・嫡出でない子の別を記載しなかったため受理されず,子の戸籍及び住民票が作成されなかったが,裁判中に,職権により,戸籍及び住民票が作成された。上告審では国に対し,「本件規定を改廃しない立法不作為の違法」を争った
[判決の要旨]
「当該届出に係る子が嫡出子又は嫡出でない子のいずれであるかは市町村長において戸籍簿の記載との対照等の方法によっても知り得るものであり(前記第1の2(1)エA参照),届書に嫡出子又は嫡出でない子の別を記載することを届出人に義務付けることが,市町村長の事務処理上不可欠の要請とまではいえないとしても,少なくともその事務処理の便宜に資するものであることは否定し難く,およそ合理性を欠くものということはできない。・・・本件規定は,嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものとはいえず,憲法14条1項に違反するものではない。」
裁判官櫻井龍子の補足意見
「本件においては,上告人子の出生届の提出に際し,その届書に「嫡出子又は嫡出でない子の別」の記載がされなかったことから受理されず,結果的に上告人子が出生から7年以上にわたって戸籍に記載されず,ひいては住民票も作成されないという事態が生じていた。その後,法務省が,平成22年に,届出人が補正の求めに応じない場合においても,届書,添付書類及び戸籍簿の記載との対照等によって補正すべき内容を認定することができるときは,付せん等にその内容を明らかにした上で,届出を受理するものとする旨を通知したことは,法廷意見に摘示するところである。日本国籍を有するものであっていまだ戸籍の記載がない者について速やかに戸籍の記載がされるべきことは,戸籍法の要請するところであり,戸籍の記載がされない者については種々の不利益が生じ得ることは明らかである。出生届の記載の仕方という子本人の意思では左右し難い事情に起因する無戸籍状態のために,子自身に種々の不利益や不便さが生じるという事態は,確実に避けられるべき事態といえよう。出生届に子が嫡出であるか否かの記載を求めることが,戸籍事務処理の便宜に資するものであることは認められるとしても,平成22年通知に記述されているとおり他に確認の手段があるのであるから,必ずしも事務処理上不可欠な記載とまではいえないであろう。そうであれば,本件のような事態に陥る嫡出でない子の問題の発生を将来にわたって極力避けるためには,父母の婚姻関係の有無に係る記載内容の変更や削除を含め,出生届について,戸籍法の規定を含む制度の在り方についてしかるべき見直しの検討が行われることが望まれるところである。」
 
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