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遺族年金

2017.3.21 New!
地方公務員災害補償法による遺族保障年金につき、遺族が妻の場合は年齢制限なく受け取れるのに、夫の受給資格について「55歳以上」とされていることは、憲法14条1項の法の下の平等に違反しないとされた例
[最高裁第三小法廷2017(平成29)年3月21日判決 裁判所ホームページ]
[事実の概要]
上告人の男性は、1998年、私立中学教諭であった妻を労災で亡くし、遺族補償年金を請求した。しかし、当時、上告人は51歳であったために不支給とされた。2013年の大阪地裁判決は、性差別にあたり違憲としたが、2015年の大阪高裁判決は、合憲としたので、男性が上告した。
[判決の概要]
地方公務員災害補償法の定める遺族補償年金制度は,憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障の性格を有する制度というべきところ,その受給の要件を定める地方公務員災害補償法32条1項ただし書の規定は,妻以外の遺族について一定の年齢に達していることを受給の要件としているが,男女間における生産年齢人口に占める労働力人口の割合の違い,平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況に鑑み,妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは,上告人に対する不支給処分が行われた当時においても合理的な理由を欠くものということはできない。したがって,地方公務員災害補償法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項のうち,死亡した職員の夫について,当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを受給の要件としている部分が憲法14条1項に違反するということはできない。
以上は,最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁の趣旨に徴して明らかである。所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる。
[ひとこと]
他にも、国家公務員災害補償法や遺族厚生年金も、遺族が妻である場合は年齢制限がなく、夫である場合には、妻の死亡時に55歳以上、との資格制限がある。諸外国ではすでに平等化が進んだ中、残念な判決である。


2016.5.13
国民年金法及び厚生年金保険法の生計同一要件につき、夫婦の個別的具体的事情を勘案し、婚姻費用の分担義務の存否その他の規範的要素を含めて判断すべき場合もあるとして、別居原因が死亡した夫の暴力であったこと等を踏まえて要件を充足するものであるとして、原判決を取消し、老齢基礎年金及び老齢厚生年金の不支給処分を取り消した事例
[仙台高裁2016(平成28)年5月13日判決 判時2314号30頁、LEX/DB25542984]
[事実の概要]
亡夫は控訴人Xと1968年に婚姻し、Xとの間にAをもうけた。亡夫とXとの間には、婚姻した当初からしばしば亡夫の女性問題をめぐって口論があり、亡夫がXに殴る蹴る等の暴力を振るうこともあった。2008年にもXは亡夫から首を絞められ、タンスに叩きつけられるなどの暴行を受け、肋骨を2本骨折する傷害を負った。Aからの強い勧めもあり、Xは翌日からA方に身を寄せ、亡夫と別居した。
Xはお互い落ち着いたら元の生活に戻ることを考えていたが、亡夫は離婚調停を申し立てた。亡夫は調停を取り下げ、再度の調停申立てや離婚訴訟の提起をしなかった。
Xはたびたび亡夫に生活費の支払いを求めたが、2度数万円の支払いを受けたのみであった。しかし、亡夫はXがXの兄から借り入れた35万円を変わって支払った。
別居中も、2008年中は月1回程度、2009年には5回程度、亡夫方を訪問した。また、電話をすることもあった。
2011年、亡夫が入院した後、Xは病院まで何回も赴き面会を希望したが、亡夫は希望しなかった。2012年に再入院した際は態度が変わり、Xと会った。Xは亡夫が亡くなるまで子らと交替しながら看病に従事した。
Xが亡夫の老齢基礎年金及び老齢厚生年金の支給を請求したところ、処分庁から不支給処分を受けた。その取消しを求めたところ、原審の仙台地裁平成28年5月13日判決は、請求を棄却した。
[判決の概要]
国民年金保険法19条1項及び厚生年金保険法37条1項は、受給権者が死亡したため未支給となった年金又は保険給付の支給を請求するためには、受給権者の配偶者等であることに加えて、その者と生計を同じくしていたものであること(生計同一要件)を要することを定めている。遺族の生活保障という法の趣旨からすると、生計同一要件を充足するというためには、原則として、「現に消費生活上の家計を一つにしていると認められる状況にあること」を要するが、たとえ婚姻関係が悪化して別居するに至っていても、夫婦の一方が他方に対して、婚姻費用の分担をしている場合には、特段の事情のない限り、要件を充足するといえる。しかし、婚姻費用の分担がなされていない場合でも、直ちに要件を充足しないとするのも不合理な場合がある。生計同一性要件の判断においては、「現に消費生活上の家計を一つにしているか否かという事実的要素によってのみ判断することで常に足りるというものではなく、当該夫婦の個別的具体的事情を艱難し、婚姻費用の分担義務の存否その他の規範的要素を含めて判断すべき場合があるというべきである。」法律上の夫婦については、婚姻関係が悪化したことにより別居中であったとしても、「事実上の離婚状態にあった場合」や「遺族となった配偶者にも十分な収入がありその生計維持のために受給権者からの経済的援助の必要がなかったことが明らかな場合は別として、受給権者が死亡した時点で遺族となった配偶者に対して現に受給権者から経済的援助がなされていなかったという事実的要素のみをもって生計同一要件を充足しないと判断することは相当ではない。」
本件では、別居の原因は、亡夫の激しい暴力であった。当初、原告は短期間の別居を意図していたが、長期になったのは、亡夫が調停を申し立てるなどしたことにある。亡夫から原告に経済的援助が行われていたといえるし、再度の入院以降は、亡夫の容態さえ許せば、別居を解消して消費生活上の家計を一つにする状況にもあった。定期的な音信、訪問がなかった時期もあるが、別居の原因が亡夫の暴力にあったこと、その後亡夫が離婚を求める姿勢を続けていたことから、それをもって生計同一性を否定するのは妥当ではない。
以上より、本件各不支給処分は違法であり取り消されるべきであるとして、原判決を取り消した。


2015.6.19
地方公務員災害補償法の格差規定を無効とし、死亡した女性教諭の夫の請求を認めて地方公務員災害補償法基金の遺族補償年金の不支給決定を取消した原判決を取り消した事例
[大阪高裁2015(平成27)年6月19日判決 判時2280号21頁、労働判例1125号27頁、LEX/DB25540665]
[事実の概要]
大阪地裁2013(平成25)年11月25日判決 判時2216号122頁と同じ。
[判決の概要]
「地公災法の定める遺族補償年金は、労災保険法及び国公災法の定める遺族補償年金と同様、基本的に社会保障制度の性格を有するものというべきである。」とし、被控訴人の「地公災法の定める遺族補償年金は、基本的に災害補償責任に基礎を置く損害補償の性格を有するものである」との主張を斥けた。
地公災法は、遺族補償年金の受給要件を死亡職員の妻については年齢を定めていないが、夫については60歳以上と定めているが、これは、職員の死亡により扶養者を失った遺族の被扶養利益の喪失を填補し、遺族の生活を保護するために、類型的に受給者を定めたものであると解されるとした。
違憲立法審査基準について、被控訴人は厳格な合理性の基準に基づいて憲法14条1項に違反するかどうかを判断すべきとしたが、本判決は、憲法25条の趣旨を実現するにあたり、社会保障の範囲、支給要件等について区別する立法措置については立法府の広い裁量にゆだねられているとして、その立法措置が、「著しく合理性を欠き、何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いであるといえる場合に、憲法14条1項に違反するものと解すべきである」とした。
その上で、受給要件の区別は、地公災法制定当時も今日も合理性を欠くものとはいえないとして、憲法14条1項違反との主張を斥けた。
さらに、自由権規約26条及び社会権規約3条に違反するとの主張についても、社会権規約は、社会保障についての権利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、上記権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を置くことを宣明したものであって、個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない(最高裁平成元年3月2日第一小法廷判決参照)等とした上で、上記各規約の条項に違反しないとした。人権委員会が採択した一般的意見や見解は法的拘束力を有しないとして、判断を左右するものではないとした。
[ひとこと]
本判決に対し、武田万里子津田塾大学教授は、「控訴審判決は法律が制定された1960年代の古い固定観念を追認したようなもの。こうした性差を認める法律を改正しなければ、いつまでたっても日本社会の中で差別はなくならないのではないか」とコメントしている(2015年6月20日付東京新聞朝刊)。


2013.11.25
地方公務員災害補償法の格差規定を無効とし、死亡した女性教諭の夫の請求を認めて地方公務員災害補償法基金の遺族補償年金の不支給決定を取消した事例
[大阪地裁2013(平成25)年11月25日判決 判時2216号122頁]
[事実の概要]
原告の妻(教諭)が職務上の心理的ストレスからうつ病を発症して自殺し、地方公務員災害補償基金に公務災害(労災に該当)と認められたことから、原告が遺族補償給付制度に基づく年金を申請した。しかし、基金は、妻の死亡時に夫が51歳であったことを理由に、年金を不支給とした。地方公務員災害補償法は、夫を亡くした女性は年齢に関係なく年金を受給できるが、妻を亡くした男性は妻の死亡時に55歳以上であることが受給の条件とされている。そこで、夫は男性にのみ年齢制限があることは法の下の平等(憲法14条)に違反し違憲無効だとして、不支給決定の取消しを求めて提訴した。
[判決の概要]
地公災法の立法当時、遺族補償年金の受給権者の範囲を画するに当たって採用された本件区別は、女性が男性と同様に就業することが相当困難であるため一般的な家庭モデルが専業主婦世帯であった立法当時には、一定の合理性を有していたといえるものの、女性の社会進出が進み、男性と比べれば依然不利な状況にあるとはいうものの、相応の就業の機会を得ることができるようになった結果、専業主婦世帯の数と共働き世帯の数が逆転し、共働き世帯が一般的な家庭モデルとなっている今日においては、配偶者の性別において受給権の有無を分けるような差別的取扱いはもはや立法目的との間に合理的関連性を有しないというべきであり、原告のその余の主張について判断するまでもなく、遺族補償年金の第一順位の受給権者である配偶者のうち、夫についてのみ60歳以上(当分の間55歳以上)との本件年齢要件を定める地公災法32条1項ただし書及び同法附則7条の2第2項の規定は、憲法14条1項に違反する不合理な差別的取扱いとして違憲・無効であるといわざるを得ない。
そうすると、地公災法32条1項ただし書1号及び同法附則7条の2第2項を根拠としてなされた、原告に対する遺族補償年金の不支給処分は、違法な処分であるから取り消すべきであり、原告が遺族補償年金の受給権者に該当しないとしてなされた、原告に対する遺族特別支給金、遺族特別援護金及び遺族特別給付金の各不支給処分も、いずれも違法なものとして取消しを免れない。


2011.11.8
国民年金及び厚生年金保険の被保険者であった夫と別居中であった妻についても、夫による生計維持関係が認められるとして、遺族基礎年金及び遺族厚生年金の支給がみとめられた事例
[東京地裁2011(平成23)年11月8日判決 判時2175号3頁]
[事実の概要]
国民年金及び厚生年金保険の被保険者であったA(夫)は、死亡当時、X(妻)と別居中であり、住民票上の住所を異にし、起居も共にしていなかった。
Xが、旧社会保険庁長官に対し、遺族基礎年金及び遺族厚生年金を請求したところ、XにはAによる生計維持関係が認められないとして不支給決定が出された。
そこで、Xは、国に対し、上記決定には、国民年金法37条の2及び厚生年金保険法59条等の解釈・適用を誤った違法があるとして、その取消しを求めて訴訟を提起した。
※国民年金法37条の2第1項(抜粋)
遺族基礎年金を受け取ることができる妻又は子は、被保険者又は被保険者であった者の妻又は子であって、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持し、かつ、次に掲げる要件に該当したものとする。
※厚生年金保険法59条1項(抜粋)
遺族厚生年金を受け取ることができる遺族は、被保険者又は被保険者であった者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母であって、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持したものとする。(以下略)
※「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(昭和61年4月30日庁保険発第29号社会保険庁年金保険部国民年金課長・社会保険庁年金保険部業務第一課長・社会保険庁年金保険部業務第二課長通知)(抜粋)
生計維持認定対象者に係る生計同一関係の認定にあたっては、次に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとする。
a 生計維持認定対象者が配偶者又は子である場合
(c)住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
@現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
A単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
ア 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること。
イ 定期的に音信、訪問が行われていること。
[判決の概要]
1 別居についてのやむを得ない事情の存在
XとAの別居は、離婚を前提として開始されたものではなく、Aの暴言等を原因として、冷却期間として開始されたものというべきであり、「止むを得ない事情」によるものであった。Aは別居開始後、躁うつ混合状態との診断を受けており、Aの状態が治療により解消されればXとAの関係も修復される余地があり、別居期間は一年余りに過ぎないことも考慮すれば、将来的には「止むを得ない事情」が消滅する可能性があった。
2 AのXに対する経済的な援助
積極的な経済的援助はなかったが、AはXに対して婚姻費用分担義務を負うべき立場にあり、Xが別居時に持ち出した貯金等がXらの生計維持に用いられ、Aがそれを理由に婚姻費用の分担を拒否していたことに鑑みれば、AがXの上記行為を受忍するという形式での経済的援助がなされたというべきである。
3 AとXとの音信、訪問
別居開始後、長男らの面接交渉等を通じて定期的な音信、訪問がなされており、Aによって長男らが連れ去られて以降Aの死亡時まではメールのやり取りを行っていた。XとAの間で長男らの監護をめぐる紛争が続き、各種の裁判手続きが行われていたこと等を考慮すれば、上記の程度のやり取りでも、「生計を共にしていた」と認められる程度に相応の頻度及び内容を持ったものというべきである。
4 やむを得ない事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められること
Xの収入は別居後の生計を維持するに十分ではなく、Xの両親もXらの生計維持に必要な経済的援助を恒常的に継続することが可能な経済状態にあったとまではいえず、Aの経済的援助が必要であった。
したがって、やむを得ない事情が消滅した場合には、再び起居を共にし、消費生活上の家計を一つにした可能性を否定できない。
5 したがって、Xは生計同一要件を満たしており、収入要件も満たしているから、国民年金法37条の2第1項及び厚生年金保険法59条1項にいう生計維持要件を満たす。
よって、不支給決定は違法であり、取り消されるべきである。
[ひとこと]
国民年金法37条の2及び厚生年金保険法59条の「妻」、「配偶者」には、事実上の離婚状態にある場合は該当しないとされる(最判昭和58年4月14日 民集37・3・270)。しかし、本事案のように、事実上の離婚状態には至っていないが、別居中に被保険者が死亡した事案においては、上記各法条における生計維持要件(なかでも生計同一要件)を満たすか否かが問題となりうる。
本判例は、具体的な事実関係を丹念に検討して生計同一要件を肯定したものであり、今後の同種事案の処理に参考になると思われる。

2007.1.30
退職年金を受給していた元地方公務員の夫とその退職前から長期間別居をしていた妻が、夫の失踪宣告による擬制死亡後に地方公務員共済組合に対して遺族共済年金の決定請求をしたのに対し、これを棄却する旨の処分を受けた場合において、妻の遺族該当性を認めた事例
[東京高判2007(平成19)年1月30日 判タ1277号91頁]
[事実の概要]
Y(地方公務員共済組合)から退職年金を受給していたAは、行方不明となり、失踪宣告によって死亡したものとみなされた。そこで、Aと14年間に亘り別居中の妻Xが、Yに遺族共済年金の決定請求をしたところ、「(地方公務員等共済組合法2条1項3号にいう)遺族」に該当しないとの理由で棄却する旨の処分(本件処分)を受けた。そこで、Xは、@本件処分には、遺族該当性に関して事実誤認があり、また行政手続法に違反する手続上の瑕疵があると主張してその取消しを求めるとともに、A決定請求手続におけるY職員の不法行為(行政手続法違反)によって精神的苦痛を被ったと主張して、Yに対し、国家賠償法1条1項に基づいて、慰謝料100万円の支払を求めた。
原審である東京地方裁判所は、@の主張は認めて本件処分を取り消したが、Aについては、Yの担当職員に行政手続法5条3項の規定に違反する行為、同法7条の趣旨に違反する行為及び同法9条1項の趣旨にそぐわない不適切な行為があったことは認めたものの、本件処分の取消しによってもなお損害賠償によって慰謝されるべき精神的苦痛がXに存するとは認められないとして請求を棄却した。
そこで、XとYは、それぞれの敗訴部分を不服として各控訴をした。
※地方公務員等共済組合法2条1項3号
遺族共済年金の受給権者である遺族は、「組合員等の配偶者、子、父母、孫及び祖父母で、組合員等の死亡の当時(失踪の宣告を受けた組合員であった者にあっては、行方不明となった当時。)その者によって生計を維持していたものをいう。」
※地方公務員等共済組合法施行令4条
「生計を維持していた者は、当該組合員又は組合員であった者の死亡の当時その者と生計を共にしていた者のうち総務大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他これに準じる者として総務大臣が定める者とする。」
※「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(昭和61年4月30日庁保険発第29号社会保険庁年金保険部国民年金課長・社会保険庁年金保険部業務第一課長・社会保険庁年金保険部業務第二課長通知)(抜粋)
生計維持認定対象者に係る生計同一関係の認定にあたっては、次に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとする。
a 生計維持認定対象者が配偶者又は子である場合
(c)住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
@現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
A単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情(★1)により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
 ア 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること(★2)。
 イ 定期的に音信、訪問が行われていること(★3)
[判決の概要]
1 争点@(遺族該当性)について
(1)遺族該当性の判断において、本件認定基準をあまりに厳格に解釈適用するのは相当でなく、事案によっては柔軟な認定をするのが相当である。
(2)「生活費、療養費等の経済的な援助が行われている」(★2)といえるか
→少なくとも組合員等からの経済的援助がなければ、生活水準の維持に支障を来すことになったであろうという程度の関係が存していたことは必要であるものの、他の諸事情と相まって「生計を共にしていた」と認められる程度の経済的援助であれば足りる。
(3)「止むを得ない事情」(★1)があったといえるか
→AとXの別居は、離婚を前提として開始されたものではなく、Aの暴力を原因として、その冷却期間として開始されたものであるし、確かにその別居期間は14年間にも及んではいるものの、その間にAからXに対し種々の経済的援助がされていることや両者の負担で共同の山小屋を新築していること、さらに、その間、手紙等のやり取りや電話連絡も頻繁にされていることにかんがみれば、別居にもかかわらずAとXとの間には夫婦としての一定のつながり、家族共同体としての意識があったものというべきであるし、また、別居期間中に双方とも別居解消に向けた行動を取ってはいないものの、逆に離婚の話やそれをうかがわせる行動も一切取られた形跡も証拠上認められないことからすれば、14年間にわたる長期の別居は、Aの暴力が原因となって開始され、その後双方の性格的な面も影響して同居のきっかけが掴めないまま長期にわたり別居状態が推移したものとみるのが相当であるから・・・「止むを得ない事情」による別居であると評価するのが相当である。
(4)「定期的に音信・訪問が行われている」(★3)といえるか
→別居の原因がAの暴力であったことにかんがみれば、夫婦にとって重要な事項に関しても、手紙や電話等で意思の疎通を図ることは不自然とはいえないし・・・別居中にAがXの住居を訪れたことは一度もなかったものの・・・山小屋において年1回の頻度で顔を合わせていること、手紙・葉書のやり取りや電話連絡は別居期間中を通じて頻繁にあり、その内容も事務的なものに終始していたわけではなく、家族としての心のつながりを感じさせる内容のものもふくまれていたのであるから、両者の間に定期的な音信があったことは明らかである。
2 争点A(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否等)について
(1)行政手続法5条3項違反及び同法9条1項の趣旨にそぐわない不適切な行為について
→本件処分の取消しによってもなお損害賠償によって慰謝されるべき精神的苦痛がXに存するものとは認められない。
(2)同法7条に定められた義務(申請が到着したときに遅滞なく当該申請の審査を開始する義務)の趣旨に違反する行為について
→損害賠償が必要な違法な損害に当たる。これらの精神的苦痛に対する慰謝料は20万円が相当である。
[ひとこと]
被保険者が失踪宣告により擬制死亡した事案において、同人と長期別居中であった配偶者の遺族共済年金の受給権を肯定した判例。具体的な事実関係を丹念かつ詳細に検討して妥当な結論を導いた、先例的な価値を有する判例である。

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