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判例 親子
子どもの虐待・親権・管理権

 児童福祉法28条の措置規定は,保護者が,その児童を虐待し,著しくその監護を怠り,その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合に,児童の施設入所が親権者又は未成年後見人の意に反するときは,都道府県は,家庭裁判所の承認を得て児童を措置入所することができるとしている。
 1990年代から日本でも子どもの虐待に対する社会的関心が高まり,2000年5月,児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)が成立し(同年11月施行),その後2004年4月,2007年5月と2度の改正がなされた。同法の施行後,虐待の相談件数は飛躍的に増加し,さらに,改正によって,児童相談所の権限は強化され,子どもの安全確認・保護に関する規定が補強された。たとえば,子どもの安全確認等のための立入調査権の強化策として,児童相談所職員は裁判所の許可に基づき臨検・捜索が出来ることとなった(児童虐待防止法8条の2,9条の2,9条の3)。立入調査を正当な理由なく拒否・妨害した場合の罰則の罰金が引き上げられた(30万円→50万円,児童虐待防止法61条の5)。保護者に対する施設入所等の措置のとられた子どもとの面会・通信制限等の強化(児童虐待防止12条1項),つきまとい・はいかいを禁止する接近禁止命令(児童福祉法28条1項の承認による施設入所の措置が行われている場合),接近禁止命令違反に対しての罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金,児童虐待防止法17条)が定められている。
 このような改正に伴い,近時,子どもの虐待に関する公表判例は増加し,親権喪失に関する審判例も公表されるようになったが,依然としてその効果の重大さから,親権喪失制度は適切に活用されているとは言い難かった。
 2011年2月,法制審議会の「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱」の答申を受け,同年5月,民法が改正された。子どもの虐待等に関する改正のポイントとしては,まず,親権を「子の利益」のための権利義務であることが明記した上で(820条),「子の利益」が害されることを親権喪失,親権停止又は管理権喪失の要件とした(834条,834条の2,835条)。具体的には親権の行使が困難または不適当で,子の利益を害する場合に,2年以内の範囲で親権停止の審判ができることとなった(834条の2)。親権喪失については,「父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」に限定された(834条)。子,未成年後見人,未成年後見監督人も,親権喪失及び停止の申立てができることとなった(834条〜835条)。

1 親権喪失・親権停止
 従来,児童相談所長から申立てられる親権喪失宣告の申立てはわずかであり,年間数件に留まっていた。親権停止制度が導入される前は,親権喪失宣告申立事件を本案として,親権者の職務執行停止,職務代行者選任の審判前の保全処分を求めることが活用されてきた。

1−2015.9.30
親権停止の審判の原因であった事情がなくなった等として、親権停止の審判が取り消された例
[和歌山家裁2015(平成27)年9月30日審判 判タ1427号248頁、家庭の法と裁判7号53頁]
[事実の概要]
申立人A(未成年子Bの母)はCと婚姻し、Bをもうけた。〇県の子ども・女性・障害者相談センター所長は、平成25年、Aの親権停止の申立てをした。家庭裁判所は、Aの精神的疾患、10年以上もの間、家事や育児を十分に担えなかったこと、B以外の子(AC間の子)に対する同居人Dによる性的虐待を招致させたこと等から、2013年、2年間の親権停止を認めた。
その後、AはDとの関係を一切絶ち、今後も関係を持たない意向である。AはEと再婚しEはAを支える意向を示しており、BはすでにA方に戻り生活し、AとEを信頼している。Aより、親権停止の審判の取消しを求める申立てがなされた。
[審判の概要]
上記の親権停止の審判以降の事情から、親権停止の取消しが認められた。
[ひとこと]
2年間の親権停止期間の満了により、親権は回復された可能性は高いが、親権停止の原因が消滅した以上は、速やかに親権停止の審判の取り消しがなされることが望ましく、本件は、その申立てがなされ、認められた事案である。停止の審判の取消しの審判例の公表は初めてとのことである。

1−2015.4.14
父母が宗教上の理由から乳児について必要な手術に伴う輸血を拒否したところ、親権者の陳述の聴取を経ずに親権停止等の審判前の保全処分が認められた事例
[東京家裁2015(平成27)年4月14日審判 家庭の法と裁判5号103頁]
[事実の概要]
未成年者は、親権者Aと同Bの長男である(2015年生)。未成年者は、C病院にて、手術が必要と判断された。AとBは手術の必要性を理解しつつ、宗教上の理由から輸血には同意しなかった。無輸血手術が可能なD病院で手術を行うこととなったが、ABは手術には同意しているが、手術に伴う輸血は拒否している。
児童相談所長が、親権停止及び職務代行者の選任を求める審判前の保全処分を申し立てた。
[決定の概要]
「未成年者の生命及び健全な発達を得るためには、手術を行う必要があり、無輸血手術を行う場合でも、凝固障害や手術中の大量出血の緊急の場合に備え、事前に輸血について同意を得ておく必要があるといえる。そうすると、輸血に同意しないことが宗教的信念などに基づくものであっても、未成年者の生命に危険を生じさせる可能性が極めて高く、親権者らによる親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害することが明らかであり、本件は保全の必要姓も認められる。」
「また、親権者らの陳述を聴く時間的余裕もない。」
以上より、申立てを認容し、児童相談所長を職務代行者に選任した。
[ひとこと]
いわゆる医療ネグレクトの事案において、2011年の民法改正前は親権喪失の宣告を本案とした親権者の職務執行停止及び職務代行者選任の保全処分が利用されていたが、改正後は、親権喪失よりも要件効果の軽い親権停止制度が利用されるものと予想されたとおり、親権停止を本案としている。
審判前の保全処分は、原則としては、「審判を受ける者となるべき者」の陳述を聴取するものとして手続保障を図っているが(家事事件手続法107条本文)、陳述を聴取していては保全処分の目的を達することができない事情があるときは、聴取する必要がないとしている(同条ただし書)。本件では、未成年者の病状や手術予定日を考慮して、当該事情があると認めた。

1−2013.3.29
母及び養父の親権を停止する審判をし、その期間をいずれも2年間と定めた事例
[宮崎家裁2013(平25)年3月29日審判 家月65巻6号115頁]
[事実の概要]
未成年者の母は、未成年者を出産後、入院中の未成年者を置き去りにして病院から疾走し、その後曾祖母等に養育されて6歳になった未成年者を引き取ったものの1日もしないうちに曾祖母のもとへ返した。私立高校へ入学した未成年者の退学届を勝手に提出して退学を余儀なくさせたり、高熱を出して親族の同意に基づき入院した未成年者を医師の判断を無視して退院させた上通院もさせなかったりした。また、母及び養父は、未成年者のアルバイト先から勝手に給料を受け取ったこともあった。母及び養父は、未成年者が少年鑑別所に送致された際には一度も面会に行かず、家裁の審判期日にも出席しなかった。未成年者が再び高熱を出して救急搬送された際、母と養父は、正当な理由なく入院に同意せず、医療行為に同意しないため、詳しい検査や定期的な通院もできなかった。
未成年者自身が母及び養父について親権停止の審判を申立てた。
[審判の概要]
本件の事情の下では、母及び養父の親権を停止すべきであり、未成年者が祖母の妹の家で生活し、今後もその養育監護を受ける意向であること等を考慮し、その期間はいずれも2年間と定めるのが相当であるとした。

1−2012.11.15
未成年者が緊急に手術治療を受けなければ死亡を免れない状況にあるにもかかわらず 手術治療に同意しない親権者の職務の執行を停止し未成年者を情緒障害児短期治療施 設・児童養護施設に入所させることに加えて、里親又は小規模住居型児童養育事業を 行う者に委託する措置についても承認した事例
[東京高裁2012(平24)年11月15日決定 家月65巻6号100頁]
[事実の概要]
親権者母が親権者父の頭を刺し逮捕されたことを契機として、2012年子が一時保護された。児童相談所は、子を何度も一時保護してきたことなどから、施設入所等の措置が必要であるとして、父母を説得した。しかし、父母の同意が得られず、児童福祉法28条1項1号所定の承認を求めた。
原審(福岡家裁2012年7月20日審判家月64巻8号109頁)は、事件本人を情緒障害児短期治療施設又は児童養護施設に入所させることを承認したが、審判段階において里親又は小規模住居型児童養育事業を行う者への委託についてまで承認すべき必要性は認め難いとして承認しなかった。
児童相談所は複数の措置につき承認が必要として抗告した。
[決定の概要]
事件本人については、母親の精神状態が悪いことを理由に乳児期から一時保護と家庭引取りが繰り返され、家庭では父母に暴力を伴う争いがあった。事件本人はADHD(注意欠如多動性障害)と診断され、集団生活に不向きな傾向があり、排尿等の生活習慣や年齢に応じた学力が身についていない。
事件本人に対する措置としては、長期的に個別で丁寧な指導を経て、安定的な人間関係を形成するという点において、専門性の高い里親若しくはファミリーホームへの委託が適切である。しかし、現時点では引取りが可能な里親等が見当たらない。里親等の候補が現れた場合には、交流を開始する必要があるが、委託措置につき承認がない場合には、交流の機会が与えられないことになる。
情緒障害児短期治療施設の入所が確実かつ安定的であるとはいえず、同施設への入所が困難な場合又は短期間で対処した場合の措置を検討しておくかなければならない。
児童福祉法28条1項1号に基づき同法27条1項3号の措置を採ることの承認については、措置を特定すべきところ、申立ての当初から事件本人の特性を踏まえて複数の措置の承認が求められている本件は、特定正を欠いた包括的承認とは異なる。
以上より、抗告に理由があるとして、原審を変更し、里親又は小規模住居型児童養育事業を行う者に委託する措置についても承認した。

1−2008.1.25
未成年者が緊急に手術治療を受けなければ死亡を免れない状況にあるにもかかわらず手術治療に同意しない親権者の職務の執行を停止し,職務代行者を選任した事例
[裁判所]津家裁
[年月日]2008(平成20)年1月25日審判
[出典]家月62巻8号83頁
[事実の概要]
男児は,緊急に手術治療を受ければ,両眼の視力がほぼ失われるが,約90%の確率で治癒が見込まれた。しかし,手術治療を受けなければ,数カ月以内には死亡する見込みであった。男児の父母は,再三にわたり医師から説明を受けたが,障害を持つ子どもを育てることに不安があるという理由から同意しなかった。そこで,児童相談所が親権喪失宣告の申立事件を本案として,審判前の保全処分として親権者の職務執行停止と職務代行者の選任を申し立てた。
[審判の概要]
父母が手術治療に同意しないことにつき合理的理由を認めることはできず,親権を濫用し,未成年者の福祉を著しく損なっているという可能性が高いとして,申立てを認容した。
[ひとこと]
いわゆる医療ネグレクト事案である。同じ家裁月報62巻8号中の田中智子東京家裁判事の「親権喪失宣告等事件の実情に関する考察」によれば,児童相談所が申し立てた親権喪失宣告の申立事件の取下げ事例は全て医療ネグレクトであり,いずれも併せて申し立てられた審判前の保全処分が認容され,必要な手術が行われる等し,その後本案の申立てが取下げとなったとのことである。現在,法制審では,医療ネグレクト等の虐待に対処すべく親権制度の見直し作業を進めているが,田中判事は,医療ネグレクト事案における高度の緊急性の要請からすると,新たな親権制度が導入された場合においても,告知により直ちに効力を生ずる保全処分も不可避と指摘する。まさに本件は緊急性を要し保全処分の活用が必須の事案であった。

1−2006.7.25
手術の同意拒否が親権の濫用に該当するとして、親権喪失宣告申立事件を本案とする親権者の職務執行停止・職務代行者選任申立てを認容した事例
[裁判所]名古屋家裁
[年月日]2006(平成18)年7月25日審判
[出典]家月59巻4号127頁
[事実の概要]
未成年者は平成18年出生、先天性心疾患により入院中。手術を段階的に行う必要があり、適切な時期に複数の手術を行わなければ根治手術の実施が不可能となることが予測され、そうなれば突然死のリスクと背中あわせで成人に到達する可能性は高くない。しかし、事件本人ら(両親)は宗教上の理由から手術に同意することを拒否したので、児童相談所長が本案として親権喪失宣告申立事件を申立て、あわせて、親権者の職務執行停止・職務代行者選任も申立てた。
[審判の概要]
「事件本人らは、未成年者の親権者として、適切に未成年者の監護養育に当たるべき権利を有し、義務を負っているところ、未成年者は、現在、重篤な心臓疾患を患い、早急に手術等の医療措置を数次にわたって施さなければ、近い将来、死亡を免れ得ない状況にある」「事件本人らの手術拒否に合理的理由を認める事はできない。してみると、事件本人らの手術の同意拒否は、親権を濫用し、未成年者の福祉を著しく損なっているものと言うべきである」として、弁護士を職務代行者として選任した。

1−2000.2.23
親権喪失が認められた例
[裁判所]長崎家裁佐世保支部
[年月日]2000(平成12)年2月23日審判
[出典]家月51巻8号55頁
[事案の概要]
養女、長男、長女の3人の児童らが入所している児童相談所長から、児童らの親権者の親権の喪失を求めたケース。養女、長女に対し、日常的に身体的虐待あるいは性的虐待を加え、長男に対して自己の気にくわないことがあった際に日常的に身体的折檻を加えた親権者に対し、親権を濫用して日常的なその福祉を著しく損なったとして、親権の喪失を宣告した。

1−1998.12.18
親権者の職務執行停止および職務代行者の選任が認められた例
[裁判所]熊本家裁
[年月日]1998(平成10)年12月18日審判
[出典]家月51巻6号67頁
[事案の概要]
二人の女児がいる事案で、親権者が感情に任せ、二女に対し木刀で殴ったり、叩いたり、蹴ったりする暴行を加え、布団の前に立たせて寝かせないなどの折檻をし、長女に対し長期間にわたり性的関係を強要したケース。児童を一時保護した児童相談所長によって申し立てられた親権喪失宣告申立事件を本案とし、その審判前の保全処分において、事件本人の親権者としての職務執行を停止し、その停止期間中、児童相談所長をその職務代行者に選任するのが相当であるとした。

1−1994.3.28
親権者の職務執行停止および職務代行者の選任が認められた例
[裁判所]大阪高裁
[年月日]1994(平成6)年3月28日決定
[出典]家月47巻2号174頁
[事案の概要]
実母とその内縁の夫によって子が虐待され、頭部外傷、硬膜下血腫等と診断され、顔が変形するほどのアザを作っている事案で、実母について親権喪失宣告の審判がなされる蓋然性があるとして、親権者の職務執行を停止し、弁護士を職務代行者に選任する保全処分を認めたケース。職務代行者選任の保全処分に対しては、その申立を却下する審判に対しても、認容する審判に対しても即時抗告はできないとした。


2 親権・管理権の制限
 2011年民法改正前は「親権一時停止制度」が存在しなかった。また,改正の際も,「親権の一部制限」の導入は見送られた。2011年民法改正以前の事例として,以下の東京高裁2007(平成19)年5月30日判決,浦和家裁1996(平成8)年5月16日審判,浦和家裁1996(平成8)年3月22日審判がある。

2−2007.5.30
親権者の一方が、遺言で子に無償で財産を与える場合、他方の親権者の管理権を奪うことができるとされた事例
[裁判所]東京高裁
[年月日]2007(平成19)年5月30日判決
[出典]判タ1256号169頁
[事案の概要]
妻が未成年の子3名を連れて夫と別居し,夫の申し立てた夫婦関係調整調停にて,夫に対し離婚を求めたところ,夫は自殺した。夫は,自殺に際し,自己が契約者及び被保険者となっている死亡保険金の受取人を妻から子らに変更するとともに,遺言書の中で,「私の財産と生命保険等によって受け取る金員の全ては3人の子供の養育の為ためにのみに使用して下さい。・・(その)金員の管理は○○家(夫の実家)によって行われるものとして下さい。」と記載していた。
妻は,夫の遺言の内容について争い,@夫の遺産について各2分の1の権利を取得した,A夫の遺産のうち子ら3名が相続した権利については,親権に基づく管理権を取得したと主張し,夫の両親に対し,妻が上記@Aの権利を有することの確認を求めた。夫の両親は,遺言により,@夫の金融財産はすべて子らに遺贈された,A子らが相続した金融財産及び死亡保険金について,妻が管理することは禁止され,民法830条1項に基づき夫の両親が財産管理人に指定されたと主張した。
一審(長野地裁2006(平成18)年2月14日)判決は,妻の請求を認容したので,夫の両親が控訴した。
[判決の概要]
本判決は,遺言には「遺贈」の表現はないが、遺言者の心境等から解釈して、遺贈により自宅と生命保険以外の財産の全ては子らに帰属することになったと認定した上,遺言により,未成年者に対する財産の贈与に関する規定である民法830条1項に基づき夫の両親が子らの相続した金融財産の財産管理人となるものとした。
民法830条1項について、(1)趣旨が無償で子に財産を与える者の意思の尊重、子の利益の保護にあること、(2)遺言者は遺言の効力が生じたときは(死亡しており)同条1項にいう「第三者」に該当すること、(3)遺言事項は法定されているが民法897条1項の祭祀承継者の指定のように解釈により遺言事項とされている事項があること等を根拠とした。
なお,死亡保険金については,受取人が原始取得するものであるから相続財産ではなく(判例通説)、民法830条1項を適用する余地はなく,妻の子らに対する財産管理権を奪うことはできないとして,夫の両親の主張を斥けた。
[ひとこと]
民法830条1項の「第三者」に関して,親権者が2人ある場合に,その一方が無償で子に財産を与えるときに他方の親権者の管理権を奪えるかについては,学説上争いがあった。本判決は,同条の趣旨が「第三者」の意思を尊重し子の利益を保護することにあることに照らし,肯定することを明らかにした。
それでも遺贈部分に関して妻の遺留分減殺請求権は残るので、遺言者は、遺言で「廃除」の意思表示をする(事案によれば認められる可能性がある)、あるいは父母に対して生前に負担付贈与(子らの養育費に使用するなどの負担)をする、あるいは信託する、などの方法があったかもしれない。生命保険金についても父母を受取人とすれば妻の管理権は及ばなかった。しかし、実際に養育し日々の監護費用を支出するのは妻であるから、勝敗5分5分のようなこの判決が妥当であったのかもしれない。

2−1996.5.16
両親の面接交渉を当分の間禁止したケース
[裁判所]浦和家裁
[年月日]1996(平成8)年5月16日審判
[出典]家月48巻10号162頁
[事案の概要]
実母及び養父から受けたと疑われる頭部傷害、栄養失調、脱水症状、意識障害等で入院した、8歳の不登校児童について、今後児童を両親の看護に委ねるのは相当ではないとして、児童を里親に委託すること、もしくは養護施設に入所させることを承認し、併せて両親の面接交渉を当分の間禁止したケース。

2−1996.3.22
親権者による転退院手続の禁止、退院後の児童相談所長による一時保護を認めたケース
[裁判所]浦和家裁
[年月日]1996(平成8)年3月22日審判
[出典]家月48巻10号168頁
[事案の概要]
脱水症状、頭部挫創、栄養失調により全身が衰弱し一ヶ月の入院治療が必要であるとされた7歳の児童について、両親の監護に委ねると同様の事態が生ずる可能性があるとして、児童相談所からの福祉施設収容の承認申立事件を本案とする審判前の保全処分として、親権者による転退院手続の禁止、退院後の児童相談所長による一時保護を認めたケース。


3 児童福祉施設入所の承認・入所期間の更新の承認
 保護者が,その児童を虐待する等,その保護者に監護させることが著しくその児童の福祉を害する場合において,施設入所の措置を採ることが,親権者等の意に反するときは,都道府県は,家裁の承認を得て,施設入所の措置を採ることができる(児童福祉法28条1項)。措置の期間は2年に限定されているが,2年を経過しても,なお措置を継続しなければ,著しく児童の福祉を害する場合には,家裁の承認を得て,措置の更新をすることができる(同条2項ただし書)。
 児童福祉法28条1項事件,2項事件について,家裁,高裁の判断が集積されつつある。

3−2009.9.7
児童養護施設等への入所措置の承認申立てを却下した原審判を取り消し,承認した事例
[裁判所]大阪高裁
[年月日]2009(平成21)年9月7日決定
[出典]家月第62巻第7号61頁
[事案の概要]
大阪家岸和田支部2009.4.3審判と同じ。
児童相談所が,原審判を不服として,抗告を申し立てた。
[決定の概要]
父母は自ら子A及び子Bの育児をした経験が乏しいことや,ABの異父姉Eに対する父の性的虐待を母が防止できなかったことなどの事情に照らすと,父母の監護能力及び監護者としての適格性には疑問がある。母だけでABが性的虐待の被害に遭うことを防止できるかも疑問である。父母がABらを監護養育するに先立ち,一定期間児童相談所において父母に対する適切な指導を実施する必要がある。しかし,その実施に至っていないことにかんがみれば,ABを直ちに父母に監護させることは,ABの福祉を著しく害するおそれがあり,児童相談所による指導実施等に1年程度の準備期間を確保するために,児童相談所がABを児童養護施設等へ入所させることを承認するのが相当である。
[ひとこと]
本決定は,性的虐待のおそれや監護能力に対する不安がある状況のまま,ABを父母のところに戻すことを是とした原審判を取り消し,児童相談所の指導のもと,父母がABを受け入れるための準備の期間が必要であるとしたもので,子どもの福祉に立脚してより慎重な判断をしたものとして,評価できる。

3−2009.8.7
再度薬物事故が発生する可能性を否定できないなどとして,児童養護施設入所措置が承認された事例
[裁判所]熊本家裁
[年月日]2009(平成21)年8月7日審判
[出典]家月第62巻第7号85頁
[事案の概要]
子は,2回,母が服用していた精神薬を服薬し,いずれも救急車で搬送された。主治医の所見では,母の代理ミュンヒハウゼン症候群の疑いがあるとされ,仮に故意の投薬がないとしても,薬の管理についての監護能力が疑われた。
1回目の薬物中毒時に子は一時保護され,その後も,母の体調不良や精神的不安定を理由に一時保護が繰り返され,養護施設に入所することになった。その後母は子と子の兄を引きとり,3人で生活を始めたが,母の体調不良を理由に数カ月の間にショートステイで児童養護施設への入所措置がとられた。
2回目の救急搬送を受けた病院と警察署からそれぞれ虐待通告があり,児童相談所は,子を一時保護したが,母が児童養護施設への入所に同意しないため,本審判申立てに至った。
[審判の概要]
母が代理ミュンヒハウゼン症候群であることを裏付ける具体的資料はなく,薬物事故が母の故意によるものとは認めることは困難である。しかし,母の体調不良により子の養育に支障をきたしていること,母の薬物管理に問題があり再度薬物事故が発生する可能性を否定できず,その場合には子の生命健康に取り返しのつかない被害を生じさせるおそれがあることなどを考慮すると,児童養護施設への入所措置を承認するのが相当である。
[ひとこと]
本件では,母の故意による服薬を示す主な証拠は,子の「あーんてしたらママが飲ませた」との言葉であった。本審判は誤飲当時4歳の子の供述の信用性を認めることに慎重を期し,代理ミュンヒハウゼン症候群(子どもを病気にさせ、かいがいしく面倒をみることにより、自らの心の安定を図る、子どもの虐待の特殊型)であることの認定は避けながらも,子が危険な状況に置かれているとして,妥当な結論に至ったと評価できる。なお,即時抗告が申し立てられたが,棄却され,確定した(福岡高裁平成21年10月15日決定,許可抗告棄却・確定)。

3−2009.4.3
児童養護施設等への入所措置の承認申立てを却下した事例
[裁判所]大阪家裁岸和田支部
[年月日]2009(平成21)年4月3日審判
[出典]家月第62巻第7号68頁
[事案の概要]
図
平成14年,Aは母の子として出生したが,超未熟児であったため,生後8か月まで入院した。その後母の同意のもと乳児院に入所となり,乳児院入所中に父から認知を受けた。Aはその後児童養護施設へ措置変更となった。
平成16年,父と母は,母の連れ子Cと父の連れ子Dを伴って,同居するようになったが,同年,父による虐待の通告を受けた児童相談所は,Cを一時保護した。児童相談所は,父によるCに対する性的虐待のおそれがあるとして,児童福祉法28条1項1号に基づく承認を求める申立てをしたが,Cの親権者が母から母の前夫に変更されたため,同申立てを取り下げた。
平成17年,母がAの引き取りを要求し,児童相談所は躊躇を覚えたものの,母に父とAを夜2人にさせないことなどを約束させた上で,引き取り要求に応じた。平成18年,Aに対する父の性的虐待の疑いが生じ,Aは一時保護された。児童相談所が28条の承認の申立てをしたところ,母が施設入所に同意したため,児童相談所は申立てを取り下げた。
同申立てに先立ち,父はCに対する強制わいせつ事件等やAに対する強制わいせつ致傷事件で起訴された。平成20年,父に対する一審判決は,Aの一時保護に関連する公務執行妨害,傷害,建造物侵入,Cに対する2度の強制わいせつと傷害について有罪としたが(執行猶予付き),Aに対する強制わいせつ致傷については無罪とした(有罪,無罪とも確定)。 B(平成19年出生)も超未熟児であり,母に引き取られることなく母の同意により施設入所となった。本件事案の申立て後に父はBを認知し,母と父は婚姻した。
上記Aに対する事件の無罪判決後,父と母は,児童相談所に対して抗議文を要求しAとBについて引き取りを要求した。児童相談所は,A,Bにつき,児童養護施設等に入所させることの承認を求めて本申立てに及んだ。
[審判の概要]
父によるAに対する性的虐待の事実は認められないとし,母がAに対する父の性的虐待を黙認したとは認められないとした上,父によるA,Bに対する性的虐待の恐れは否定できないが,児童相談所が主張するほど大きいとは言えない。また,Aは出生後大部分の期間,Bは出生後現在まで,施設で生育していること等から,父母の監護能力には不安がないわけではないが,定期的に面会してきた実績などから,監護へ向けた意欲が低いとまではいえない。性的被害の回復困難性その他児童相談所が主張する事情を考慮しても,保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合に当たるとまではいえないとして,児童相談所の申立てをいずれも退けた。
[ひとこと]
本審判は,父による性的虐待のおそれと,父母の監護能力が低いことを認めながらも,施設入所の承認申立てを却下したものであるが,本件の子らが6歳,2歳といずれも手厚い監護が必要の上,自らの危険を回避するには余りにも幼いこと,子どもへの虐待の回復困難性を軽視しているように思われる。大阪高裁2009(平成21)年9月7日決定により本審判は取り消されることになった。

3−2009.3.24
母が子の養育方法について児童相談所等の関与を受け入れる必要性を認識しているなどとして,児童養護施設入所措置の期間更新の承認申立てを却下した事例
[裁判所]秋田家裁
[年月日]2009(平成21)年3月24日審判
[出典]家月第62巻第7号79頁
[事案の概要]
母は,父との離婚後,子(1997年生)の単独親権者となったが,子に虚言癖や盗癖など問題行動がみられ,子を自宅から追い出したり,行き先を告げずに外泊したり,執拗に責めたてたりした。2005年,児童相談所は子を一時保護した。秋田家裁大館支部において,子を児童養護施設に入所させることを承認する旨の審判がされ,2007年同審判は確定した。児童相談所は,審判にもとづき,子を児童養護施設に入所させる措置をとった。
2007年の審判後,母は,児童相談所や施設の担当者に不満を述べつつ,子と一日も早く同居するには何をすればよいか質問し,担当者の助言に沿って子に謝罪する等した。また,児童相談所は敵である旨述べながらも,児童相談所との今後の関わり方等について質問することもあった。子は当初は母に対する抵抗感を示していたが,母との面会を重ねるうちに,母が以前より優しくなり,中学入学後同居したい旨述べるようになった。子は物を盗むことはなくなったが,嘘をつくなどの問題行動は残っている。
本件は,児童相談所が,児童養護施設入所措置の期間更新の承認を求めた事案である。
[審判の概要]
母が,児童相談所等の関係機関に対して批判的な言動をしつつも,(1)子に対する対応にいきすぎた部分があったことを認め,これを改める必要性や,児童相談所等の関係機関の関与を受け入れる必要性を認識していること,(2)子のための居室を準備し,経済的にも子を受け入れることが可能な状況にあること,(3)子が母との同居を強く望んでいることからすると,入所措置を継続しなければ母が子を虐待し著しく子の福祉を害すると認めることはできず,本件申立てを却下するのが適切である。

3−2009.3.12
児童養護施設への入所期間の更新についての親権者父の同意があるが,入所期間更新承認申立てを却下した原審判を取り消し,入所期間の更新を承認した事例
[裁判所]大阪高裁
[年月日]2009(平成21)年3月12日決定
[出典]家月61巻8号93頁
[事案の概要]
児童養護施設への入所措置承認審判に基づいて入所措置が取られている事件本人(女,15歳)につき,入所措置の更新について親権者父の同意があるが,父が従前,児童相談所に対し,脅迫的,自暴自棄な発言をしてきたこと,入退院を繰り返しており健康状況や英克状況が安定したものとはいえないことなどからすると,その同意は必ずしも父の心情を反映するものではなく,同意を翻意する可能性は大きいといえ,なお,本件入所措置は,親権者父の意に反する場合に当たる。したがって,本件入所措置を継続しなければ,事件本人の福祉を著しく害するおそれがあると認められるとして,措置の期間更新の承認の申立てを却下した原審(大阪家裁平成21年1月23日審判)を取り消し,措置の期間更新の承認をした。

3−2008.7.14
事件本人に対する直接的な暴行はされていないとしながら,父母に監護させることは著しく事件本人の福祉を害するとして,児童養護施設への入所措置を承認した事例
[裁判所]東京家裁
[年月日]2008(平成20)年7月14日審判
[出典]家月61巻8号111頁
[事案の概要]
事件本人(4歳)は,直接父母から暴行を受けてはいなかったが,一時保護中の施設内の言動から,父母により実兄(5歳)が度重なる暴行を加えられていたことにより心的傷害を受けたことが推認される。虐待環境から切り離し安定した環境の中で生活させるとともに,ある程度長期にわたって専門的な働きかけを行う必要がある。児童相談所において,段階的に事件本人を父母の下に戻すための再統合プログラムを策定していることも考慮すれば,父母に事件本人を監護させることは著しく事件本人の福祉を害するとして,児童福祉法28条1項により,児童養護施設への入所措置を承認した。さらに,同条6項に基づき,児童相談所長に対し,親権者両名にしつけの方法等についての不適切さを認識させ,適切な養育方法に向けて努力させること等の指導措置の勧告をした。

3−2008.7.3
虐待を疑われる実父と離婚した実母に監護させることが事件本人の福祉を著しく害するとはいえないとして,乳児院への入所措置の承認申立てを却下した事例
[裁判所]大阪家裁
[年月日]2008(平成20)年7月3日審判
[出典]家月61巻8号103頁
[事案の概要]
児童相談所長が,脳挫傷,頭蓋骨骨折等で入院中の事件本人(0歳)につき,乳児院への入所の承認を求めた事案について,事件本人の受傷は実父の虐待によることが推認されるとしたうえ,実父母が離婚に至り,実父が自宅を退去していること,単独親権者となった実母は事件本人の養育に関し虐待に類する行為は一切うかがわれず,むしろ養育に熱心であったとうかがわれるのであるから,実母に監護させることが著しく事件本人の福祉を害するとは認められないとして,申立てを却下した。

4 その他
4−1992.1.30
父に対する子らの養育監護を受けられなかったことによる慰謝料請求を肯定した事例
[裁判所]大阪高裁
[年月日]1992(平成4)年1月30日判決
[出典]判タ788号205頁
[事案の概要]
父が母と子A,子Bを残して出奔した約4年後,母は交通事故に遭い,ABを残して死亡した。母の死亡後,叔父が後見人に就いたが,A,Bは生活保護を受けながら二人だけで生活した。本件は,所在不明の父に対して,@母から出奔した父に対する不貞行為,悪意の遺棄を理由とする慰謝料請求権をA,Bが母から相続したとして,また,A養育,監護を受けられなかったことによるAB固有の慰謝料を請求した事案である。
一審(京都地裁1991(平成3)年7月18日判決・判タ772号238頁)は,@Aとも否定し,請求を棄却したため,ABが控訴した。
[判決の概要]
@夫婦関係の破たんは認めるも,破たんの原因及び夫婦のいずれに主たる責任があったのか断定できないとして,母から父に対する慰謝料請求を否定した。
AAB固有の慰謝料についても,母がABの養育,監護を担うことになったが,破たんにつき父に主たる責任があったことや,父に養育料の負担をする能力があったかを認めるに足りる証拠はないとして,直ちに不法行為が成立すると認定することはできない。しかし,母が死亡後もABを放置したことは,違法であり,故意または少なくとも過失が推認されるので,不法行為を構成する。ただし,父に養育料の能力があることの証拠がないこと等から,一人あたり50万円の慰謝料と一割の弁護士費用が相当とした。
[ひとこと]
本件は,不在者である父が相続した母の交通死亡事故による損害賠償請求権の時効消滅が懸念されたため,父に対する債務名義を本件訴訟で取得して父が交通事故の加害者に対して有する損害賠償請求を確保する意図で提起されたものであるという。しかし,そうであるなら,不在者の管理人(民法25条以下)を選任した上で訴え提起,又は債権者代位請求権の行使(民法423条)による訴え提起をした上で,ABないし後見人が管理人に扶養料ないし後見人が立て替えた過去の扶養料を請求する(不当利得返還請求など・民法703条)のが本筋ではある旨,指摘がなされている(判タ788号205頁〜206頁)。本判決中でも,養育料の不履行については別途解決の余地があると指摘されている。

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