判例
1  離婚原因
1-1 有責配偶者からの離婚請求
1−1−2007.02.27 離婚請求控訴事件(東京)
別居9年以上、同居約14年の夫婦間の息子(成人)に重い障害があるため未成熟子とみて離婚請求が棄却された事例
[裁判所]東京高裁
[年月日]2007(平成19)年2月27日判決
[出典]判タ1253号235頁
[事実の概要]
別居9年以上、同居約14年、破綻の主たる原因は夫の不貞、息子約23歳は四肢麻痺の重い障害を有し日常生活全般にわたり介護を必要とする状況にあり、妻54歳は就業して収入を得ることが困難な状態にある。夫から離婚請求がなされ、一審は離婚請求を棄却した。
[判決の概要]
一郎(息子)が日常生活の全般にわたり介護を必要とする状態にあることは・・認定のとおりであり、ボランティアの助けを借りれば自立的な生活が可能であるとはいっても、母親である被控訴人の介助なしで、日々の生活を送ることができるとは考えられず、そのような一郎を放置して被控訴人が相当時間就業することが可能であるとは考えにくい。また、被控訴人は、その年齢(54歳)からしても、限られた時間の中で、安定した職業を見つけることは困難であろうと考えられる。また、・・認定のとおり、被控訴人(妻)は、控訴人(夫)が○○ビルから賃借している本件建物に居住しており、控訴人と被控訴人が離婚した場合、被控訴人が現住居からの退去を余儀なくされる可能性も否定し難い。そうすると、被控訴人が離婚により、経済的に困窮することは十分に予想されるところである。・・・
このような状況を総合的に考慮すれば、控訴人と被控訴人の離婚は一郎の今後の介護・福祉等に一層の困難を生じさせ、離婚により被控訴人が精神的・経済的に極めて過酷な状況に置かれるものというべきである。本件離婚請求を認容することは著しく社会主義に反し、本件請求は、信義誠実の原則に照らし認容することができないものというべきである。
 
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