判例
1  離婚原因
1-1 有責配偶者からの離婚請求
1−1−2016.11.17 離婚等請求控訴事件
有責配偶者からの離婚請求を認容した原判決を変更して棄却した上、不貞相手に対する慰謝料を一部認容し賠償額を増額した事例
[札幌高裁2016(平成28)年11月17日判決 LEX/DB25544250]
[事実の概要]
夫婦は1996年に婚姻し、両者の間に長男(1998年生)と長女(2000年生)がいる。2012年から夫が単身赴任となり、単身赴任期間中にスナックのホステスとして勤務していた女性と知り合い、肉体関係を持つようになった。2013年、妻が女性を被告として損害賠償請求訴訟を提起した。その後、同事件は、夫からの離婚訴訟提起に伴い、札幌家裁に移送となり、併合された。2013年には夫は単身赴任先から妻子が住む市内に転居することになったが、自宅に戻らなかった。
原審の札幌家裁平成27年5月21日LEX/DB25506324は、夫を有責配偶者と認めながらも、妻にも杜撰な家計管理等の一定程度の有責性がある等と指摘し、別居に至った直接のきっかけは妻が自宅の鍵を取り替えて夫が自宅に戻ることを不可能としたことであること、子らは比較的年長者であること等から、夫からの離婚請求が信義則上許されないものということはできないと説示して離婚を認容し、妻から女性に対する損害賠償は110万円の限度で認容した。
[判決の概要]
1離婚請求・予備的請求
控訴人妻が自宅の鍵を取り替えた時点で控訴人妻と被控訴人夫との婚姻関係が破綻したと認めながら、破綻の主な原因は、不貞関係を解消しようとせず、女性との再婚を強く望む意向を示した夫にあり、夫がいわゆる有責配偶者であるとした。その上で両者の年齢(夫40歳、妻41歳)、婚姻期間約19年10月に比し別居期間が2年11月に過ぎず相当長期間に及ぶとはいえないこと、未成熟子2人がいること、妻はパートタム労働者であり、子らはいずれも学齢期にあり、離婚した場合、養育費等の支払いがあっても、妻が経済的に余裕のない状況に陥る可能性があること等から、夫の離婚請求を認容することは著しく社会正義に反するとした。
夫は、破綻の原因は、妻が家計管理が杜撰で多額の借り入れをしたことであると主張したが、判決は、自動車等を頻繁に買い換える等した夫にも家計のやりくりがうまくなった原因があるとし、妻の行為は破綻の原因ではないとした。また、夫は、妻の家事が不十分だったことも原因としたが、判決は、妻の家事に不十分な点があっても妻のみに責任があるとはいえないし、夫は従前問題視していなかったとして、その主張も理由がないとした。妻が自宅の鍵を取り替えたことについても、夫が不貞行為を継続したために婚姻関係が極めて悪化していたことからすれば、婚姻関係破綻の直接の原因とはいえないとした。
以上より、原判決を変更し、被控訴人夫の請求を棄却した。控訴人妻が控訴審から離婚等について予備的反訴をしていたが、被控訴人夫の離婚請求が認容されることを条件とするものであるから、予備的反訴については判断しなかった。
2控訴人妻から夫の不貞相手への損害賠償請求
一切の事情を考慮して、慰謝料の額は150万円を相当とし、弁護士費用15万円を認めた(合計165万円)。
 
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