判例
2−1−2013.3.22
夫が妻の不貞行為を理由として慰謝料440万円の支払いを求めた事案において、妻からの夫の不貞行為を原因とする信義則違反の主張を排斥しつつ、夫婦破綻の原因は妻の不貞行為が唯一の原因ではないとして慰謝料150万円の支払いを認めた事例
[東京地裁2013(平成25)年3月22日判決 LEX/DB25512056]
[事実の概要]
原告(夫)及び被告(妻)は、1993(平成5)年に婚姻した夫婦であり、両者の間には長女及び長男(成人ないしまもなく成人)がいる。
2011(平成22)年、原告が被告の継続的な不貞行為の事実を知ったことで、夫婦関係に亀裂が生じ、同年、被告が自宅を出ていく形で別居が開始した。
そこで、原告は、被告に対し、繰り返し不貞行為に及んだことにより婚姻関係を破綻させ、著しい精神的苦痛を与えたとして、慰謝料400万円及び弁護士費用40万円の計440万円の支払いを求めた。
これに対し、被告は、自己の不貞行為を否定するとともに、原告が、2004(平成16)年から2006(平成18)年頃に、国内外の風俗店等の利用を含め、数々の女性との不適切な性的関係を結び、不貞行為等を行ってきたことを理由として、原告の請求は信義則に反すると主張した。
[判決の概要]
「総合すれば、被告は遅くともZ(注:不貞相手)との行動が撮影された平成23年〇月○日には、Zと交際関係にあったと推認されるから、被告とZとは不貞関係にあったと言うべきである。」として、別居直後の交際の事実をもって、被告とZとの不貞関係を認めた。
これに対し、被告の信義則違反の主張については、「被告は、国内または海外において、風俗店等で性的関係を持つ等の行為に及んだことを推認することができる。」と妻以外の女性との性的関係を認定しながらも、「しかしながら、(被告の当該行為は、)被告とZとの関係と対比されるべき不貞関係を指すのではなく、専ら、風俗店における遊興等の経験を指すと認められるから、この点からも被告の上記主張を採用することができない。」として、信義則違反との被告の主張を排斥した。
ただし、その上で、「被告とZとの不貞関係が原告と被告との夫婦共同生活を破綻させた原因であるとはいえ、上記破綻の原因がそれのみであると認めることには疑問がある」とし、「本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、被告の不貞関係によって原告が受けた精神的苦痛を填補するための慰謝料の額は、やや控えめに算定されてもやむを得ないというべきであって、130万円と算定することが相当である。」とし、弁護士費用相当額の損害を20万円とした上で、被告に計150万円の損害賠償支払い義務を認めた。
 
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