判例
渉外離婚(国際離婚)

6 慰謝料・財産分与
離婚慰謝料の準拠法については,通説および判例の多くは,離婚の際における財産的給付の一環を成すものであるから離婚の効力に関する問題として,離婚の準拠法(法適用27条)によるとしている。財産分与の準拠法についても,判例は,離婚に伴う財産給付の問題であるから離婚の効果の問題として離婚の準拠法(法適用27条)によるとしている。


6−2013.10.28
内縁の不当破棄等(不法行為)についての準拠法をフィリピン法であるとした例
[東京地裁2013(平成25)年10月28日判決 戸時714号31頁]
[事実の概要]
反訴としてであるが、日本に在住のフィリピン女性が、マレーシア在住の日本人男性に対して、内縁関係の不当破棄、内縁継続中の不貞行為につき、不法行為として損害賠償を請求した。
[判決の概要]
「同法(法の適用に関する通則法)の施行日(平成19年1月1日)前に加害行為の結果が発生した不法行為によって生ずる債権の成立及び効力については、同法による改正前の通則法(改正前の題名は「法例」。以下「法例」という。)が適用され、法例11条1項は、不法行為の準拠法につき不法行為地法主義を採用していたところ、上記に認定したXの各不法行為の請求原因事実は主としてフィリピンで発生し、かつ、Yの損害もフィリピンで発生しているというべきであるから、本件各不法行為の準拠法はフィリピン法であると解される」とし、男性に金100万円の慰謝料の支払を命じた。

6−2000.7.12
[裁判所]東京高裁
[年月日]2000(平成12)年7月12日判決
[出典]判時1729号45頁
[判決の概要]
中華民国民法では財産分与を認めていないところ,中華民国籍の夫から中華民国籍の妻に対し財産分与は無効と主張した裁判において,財産分与を全く認めないことは公序良俗に反するとして旧法例30条により中華民国民法の適用を認めず財産分与を有効とした。

6−1996.1.29
[裁判所]仙台高裁秋田支部
[年月日]1996(平成8)年1月29日判決
[出典]判時1556号81頁
[判決の概要]
中国に帰国した中国人妻が日本に住む日本人夫に対し300万円の離婚慰謝料を求めた事案で,一審は、原告が中国で生活していることを考慮して慰謝料を20万円としたが(秋田地裁大曲支判1993(平成5)年12月14日、判時1532号116頁)、高裁では,居住地がどこであるかは一事情であるが,これを重要な要素として減額させれば日本人妻と離婚した場合と対比し被告に不当に得をさせる結果を生じ公平ではないとして慰謝料100万円を認めた。
[ひとこと]
国によって貨幣価値が異なる場合,慰謝料の基準をどの国におくかという問題の解決例である。

6−1991.10.31
[裁判所]横浜地裁
[年月日]1991(平成3)年10月31日判決
[出典]判時1418号113頁
[判決の概要]
離婚慰藉料につき、離婚の際における財産的給付の一環を成すものであるから離婚の効力に関する問題として,離婚の準拠法(法例16条)によるとした。

6−1990.6.19
[裁判所]神戸地裁
[年月日]1990(平成2)年6月19日判決
[出典]判時1383号154頁
[判決の概要]
改正後の韓国民法によっても,協議離婚の場合には,慰謝料請求権がないとされている。このため,やはり,韓国法の適用は公序に反するとして法例30条(現33条)を適用し,日本民法により離婚慰謝料を認めた。
 
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