職場で

-  上司・同僚・取引先による事例

--1956.10.29 S興業事件(三重)

    代表取締役X男が、事業所閉鎖にともない職を失うA女宅で、飲酒したうえA女

にわいせつ行為に出たことにつき、5,000円の支払いが命じられた事例。

[裁判所]津地裁

[年月日]1956(昭31)年1029日判決

[出典]下級裁判所民事裁判例集7巻103017

[事実の概要]代表取締役X男が、事業所閉鎖にともない職を失うA女宅において、飲酒

したうえA女(61)にわいせつ行為に出たことより、A女を侮辱し、精神的苦痛

を与えた。

[原告の請求]10万円。

[判決の概要]5,000円。「A女が…当時満61歳の寡婦であったこと、特別の社会的地位は

ないこと、及び…被告X男がその当時被告会社の代表取締役であった事実等を総

合すれば、右慰謝料の額は金5千円を以って相当と認める」。「被告X男の右不法

行為が、被告会社の業務執行につきなされたものであることを認めるに足る証拠

はない」。

[ひとこと]不法行為があったのは昭和26年、判決は昭和31年である。わいせつ行為

(原告は強姦未遂と主張)への損害賠償を10万円(原告の当時の月給は4千円程

度)請求したが、認容は5千円であった。金額の多寡は即断できないが、原告が

61歳の寡婦」であり「特別の社会的地位はないこと」を考慮しており、このよ

うな判断基準自体が、さらに原告を貶めているように思える。