職場で

-  上司・同僚・取引先による事例

--1990.12.20 Nホテル事件(静岡)

会計課長X男が、部下A女を食事に誘い、食事を終えて帰路についた車中でキスを

強要したことにつき、110万円の支払いが命じられた事例。

[裁判所]静岡地裁沼津支部

[年月日]1990(平2)年1220日判決《確定》

[出典]判例タイムズ745238

労働判例58017

労働経済判例速報14193

[評釈等]浅倉むつ子=今野久子『女性労働判例ガイド』32頁(有斐閣・1997

松本克美・ジュリスト985122

新谷真人・季刊労働法159197

[事実の概要]会計課長X男(30代)は、A女(23)を誘っての夕食後、X男の運転す

る自動車で帰路についたが、車中で「モーテルに行こうよ」と執拗に誘い、はっ

きりと拒否するA女にキスを要求し、応じなければ暗い淋しい道を行く等と脅迫

し、執拗にキスを繰り返した。A女は退職。

[原告の請求]599万円。

[判決の概要]110万円。「被告の一連の行動は、女性を単なる快楽、遊びの対象としか

考えず、人格を持った人間としてみていないことの現れであることがうかがわれ、

このことが原告にとってみれば日時が経過しても精神的苦痛、憤りが軽減されな

い原因となっている」。

[ひとこと]判決文では用いられていないものの、セクシュアル・ハラスメントという語が

社会問題として認識されてから初めて下された判決である。ただし、本判決は被

告が出頭しなかった欠席手続のため、原告の主張を被告が自白したものとみなさ

れており、事実関係は争われていない。