1 職場で
1-1
上司・同僚・取引先による事例
1-1-1994.05.26 土木建築会社事件(石川)
社長X男が、自宅の家政婦として雇用したA女に性的関係を迫り、これを拒否し
てセクシュアル・ハラスメントであると抗議したA女を解雇したことにつき、A
女の反抗的態度から解雇はやむをえないが、セクシュアル・ハラスメント行為に
ついては80万円の支払いを命じた事例。
[裁判所]金沢地裁輪島支部
[年月日]1994(平6)年5月26日判決
[出典]労働判例650号8頁
[評釈等]浅倉むつ子=今野久子『女性労働判例ガイド』37頁(有斐閣・1997)
水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001)
奥村回・労働法律旬報1344号49頁
奥山明良・労働判例656号6頁
山崎文夫・労働法律旬報1344号42頁
[上訴等]名古屋高裁判決1996年10月30日(138万円)1-1-1996.10.30
最高裁判決1999年7月16日(棄却)
[事実の概要]社長X男は(50)、家政婦A女(43)の体に触ったり、胸に触ったり、抱
きついたりして不快感を与え、労働環境を悪化させ、A女からセクシュアル・ハ
ラスメントであると抗議を受けると、A女の作った昼食を食べない、金銭管理を
A女にさせない、ボーナスを支給しないなどの嫌がらせを行い、反抗的な態度で
抗議を続けるA女の左耳付近を殴打し、のちに解雇した。
[原告の請求]500万円。
[判決の概要]80万円。被告の「嫌がらせは、前記性的行為の中止と時期を同じくして
始まっていることを考え合わせると、前記嫌がらせと被告の前記性的行為との間
に因果関係がないとはいえない」。しかし「原告の指示命令違反、反抗的態度は
著しく、被告の前記嫌がらせに対する抗議を考慮してもなお、限度を越えており、
原告の解雇はやむをえない」。被告の暴力については「違法性を認めることがで
きることはいうまでもな〔いが、原告の挑発に対してなされたものであるから〕
性的行為と因果関係のあるものとは認められない」。
[ひとこと]控訴審では138万円に増額。