職場で

-  上司・同僚・取引先による事例

--1996.10.30 土木建築会社事件控訴審(石川)

    社長X男が、自宅の家政婦として雇用したA女に性的関係を迫り、これを拒否し

てセクシュアル・ハラスメントであると抗議したA女を解雇したことにつき、80

万円の支払いを命じた原審を変更して138万円の支払いを命じた事例。

[裁判所]名古屋高裁金沢支部

[年月日]1996(平8)年1030日判決

[出典]判例タイムズ950193

労働判例70737

労働経済判例速報162415

[評釈等]水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001

笹沼朋子・労働法律旬報141416

[上訴等]最高裁1999716日判決(棄却)労働判例76716

原審:金沢地裁輪島支部判決1994526 1-1-1994.05.26

[事実の概要] 原審では認められなかった原告の強姦未遂の主張を強制わいせつとして認め

る一方、原審が認めた原告のボーナス請求を否定した。

[原告の請求] 550万円。

[判決の概要] 138万円。解雇は「元はと言えば被告の違法な言動が原因しているとはい

え、被告のした指示が、すべてセクシュアル・ハラスメントであるとして…執拗

に抗議する態度からして、両者の信頼関係は完全に損なわれるに至っていること

及び…原告の家政婦としての能力に疑問の点があることからすれば…解雇の権利

を濫用した違法なものとは認めることはできない」。「原告は…被告とのきわめ

て卑猥な会話の中で容易に性的対象になると誤解させる余地のある会話をし…被

告の下心を早期に、容易にわかった筈であ〔るにもかかわらず〕…夜間被告が留

守であったとはいうものの、降雪を理由に一度ならず被告宅に宿泊し、入浴する

など、自ら被告の違法行為を招いた責めなしとはいえない」。

[ひとこと] 上司から性的なからかいや侵害行為を受けたとき、女性はどう反応すればよい

のだろうか。適当に相手をすると「きわめて卑猥な会話の中で容易に性的対象に

なると誤解させる余地のある会話をし〔た〕」と自招危難のように非難されてし

まうし、その都度抗議をすれば「被告のした指示が、すべてセクシュアル・ハラ

スメントであるとして…執拗に抗議する」といいがかりをつけているかのように

非難されてしまう。裁判所の求める清く/正しく/美しい被害者の対応とはどの

ようなものなのか、その対応を取ることは現実に可能なのかを熟慮した上で、将

来の紛争を予防するために、被害者が模範とできるように、例示してほしいもの

である。原告の反抗的な態度から解雇はやむをえないとしたのは1-1-200

1.03.26も同様。