1 職場で
1-1
上司・同僚・取引先による事例
1-1-1996.12.25 A広告代理店事件(東京)
会社会長X男が、営業部の部下A女に対して、見舞いの際にキスをしたり、むりや
りドライブに連れ出す等をしたために精神的苦痛を感じてA女が退職したことに
つき、X男と被告会社に対して148万5千円の支払いが命じられた事例。
[裁判所]東京地裁
[年月日]1996(平8)年12月25日判決
[出典]労働判例707号20頁
[評釈等]水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001)
[事実の概要]X男(60)は、A女(32)に対し、遠回しに愛人になるよう求め、A女の
入院中見舞いに訪れた際には突然キスをし、また、病み上がりで嫌がっているA
女をドライブに連れて行き、寒空の下を歩かせた後にキスをした。A女はX男の
行為を恐れ、できるだけX男と接触しないよう試みたが、体調を崩し、X男から
電話されないように会社に虚偽の電話番号を届けていたことから会社との良好な
関係が壊れ、退職するに至った。
[原告の請求]713万円。
[判決の概要]148万5000円。「〔被告X男の行為には〕原告に対する愛情を感じさせる
事情は証拠上全く窺えず、逆に…原告の体調や迷惑を顧みず、自己の気の向くま
まに行っているもので、悪質である。このような言動は、被告X男が被告会社の
会長であり、原告の上司であることから、原告が被告X男の要求にあからさまに
逆らえないことを利用して行われたものであると認められる」。
[ひとこと]