職場で

-  上司・同僚・取引先による事例

--1997.04.17  呉服販売会社事件(京都)

    専務取締役X男が、社内の朝礼において、従業員A女の異性関係に関する発言を

し、さらにA女に退職を促したことにつき、X男と被告会社に対して約215万円

の支払いが命じられた事例。

[裁判所]京都地裁

[年月日]1997(平9)年417日判決《確定》

[出典]判例タイムズ951214

労働判例71649

労働経済判例速報16403

[評釈等]水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001

水島郁子・法律時報70793

石田眞・労働法律旬報144120

[事実の概要]取締役X男は、社内の朝礼において、女子更衣室の盗撮行為により懲戒解

雇された訴外元従業員と、盗撮事件後の雰囲気から「会社を好きになれない」と表

明した従業員A女とが男女関係にあるかのような発言をし、さらにその場でA女

に退職を促したため、A女は会社に居づらくなり、退職した。

[原告の請求]約621万円。

[判決の概要]約215万円。被告X男の発言により「原告の名誉は毀損されたというべき

である〔から〕本件X男発言の違法性は軽いとはいえない」。「被告X男は、不

用意な発言を差し控える義務があると言うべきで…また、不用意な発言をした場

合には、その発言を撤回し、謝罪するなどの措置をとる義務があるというべきで

ある」。「原告にとって被告会社に居づらい環境になっていたのに、何の措置も

とらなかったため、原告は退職しているから、被告X男は、原告の退職による損

害を賠償する責任を負う」。被告会社については、「何人がビデオ撮影したかな

どの真相を解明する努力を…する義務があったというべきである」のに「ビデオ

カメラの向きを逆さにしただけで…何の措置も取らなかった」うえ、被告会社の

「取締役である被告X男が、朝礼において、本件発言をしているから、被告会社

は、民法715条により…賠償する責任を負う」ものであり、かつ、原告の退職に

よる損害を賠償する責任も負う。

[ひとこと]A女の「会社を好きになれない」発言は、被告会社の盗撮行為に対する不適切

な対応への不快感と思われ、取締役X男の発言は不快感を表明したA女への制裁

であろう。同様の事例に仙台自動車販売会社事件1-1-2001.03.26