1 職場で
1-1
上司・同僚・取引先による事例
1-1-1997.11.20 S建設子会社事件控訴審(神奈川)
セクシュアル・ハラスメント事実を否定して原告の請求を棄却した原審を取り消
し、上司X男の部下A女へのわいせつ行為を認めて275万円の支払いを命じた事
例。
[裁判所]東京高裁
[年月日]1997(平9)年11月20日判決《確定》
[出典]判例時報1673号89頁
判例タイムズ1011号195頁
労働判例728号12頁
労働経済判例速報1661号3頁
労働法律旬報1425号28頁
[評釈等]渡辺智子(原告代理人)・労働法律旬報1425号28頁
名古道功・民商119巻4=5号315頁
水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001)
[上訴等]一審:横浜地裁平成7年3月24日判決(棄却) 5-1-1995.03.24
[事実の概要]二人きりの事務所内で、上司X男(49)が部下A女(25)に突然抱きつき、
キスをし、下腹部を触るなどのわいせつ行為を20分以上行った。
[原告の請求]550万円と謝罪広告。
[判決の概要]X男と被告S建設子会社に275万円。X男の出向元であるS建設の使用者
責任は否定。「〔性被害者の〕すべての者が逃げ出そうとしたり悲鳴を上げると
いう態様の身体的抵抗をするとは限らないこと…特に職場における性的自由の侵
害行為の場合には、職場での上下関係による抑圧や、同僚との友好的関係を保つ
ための抑圧が働き、これが、被害者が必ずしも身体的抵抗という手段を採らない
要因として働くことが認められる。したがって、本件において、控訴人が事務所
外へ逃げたり、悲鳴を上げて助けを求めなかったからといって、直ちに本件控訴
人供述の内容が不自然であると断定することはできない」。
[ひとこと]本件については金子雅臣『裁かれる男たち』(明石書店・2001)が詳しい。