1 職場で
1-1
上司・同僚・取引先による事例
1-1-1999.01.18 A建設会社事件(千葉)
上司X男が、ほぼ同年齢の新入社員A女に仕事を教える際、自らの性体験を語り、
「おばさん」「子持ちのばばあ」と呼び、必要以上に身体を密着させる、抱きつ
く、髪を撫でる、卑わいな写真をA女のコンピューターの前に置くなどしたこと
につき、80万円の支払いが命じられた事例。
[裁判所]千葉地裁
[年月日]1999(平11)年1月18日判決《確定》
[出典]労働判例768号87頁
[事実の概要]上司X男は、ほぼ同年齢の新入社員A女(31)に仕事を教える際、自らの
性体験を語り、A女を「おばさん」「子持ちのばばあ」と呼び、必要以上に身体
を密着させ、抱きつき、髪を撫で、卑わいな写真をA女のコンピューターの前に
置くなどした。A女は、その都度不快感を示したり抗議を行ったり、社長立会い
の下でセクシュアル・ハラスメント行為を行わない旨の誓約を求めるなどしたが、
その後退職した。
[原告の請求]200万円。
[判決の概要]80万円。原告が既婚者であり原被告がほぼ同年齢であることに鑑みれば
「被告が原告に対して性的な話題を持ち出すことはそれほど不自然とはいえない
ものの…上司として…もっぱら勤務時間中に…原告が被告の性的嫌がらせに対し
明確な拒否反応を示していたにもかかわらず、被告は原告の意思を無視してこれ
を繰り返していたこと…嫌がらせの内容、期間等を考慮すると原告に対する被告
の一連の行為は、社会的相当性の程度を超えたものというべきであって、原告に
対する人格権の侵害として違法の評価を免れない」。
[ひとこと]既婚者で同年代であれば性的な話題を持ち出すことはそれほど不自然ではな
い、との前提が不自然である。基本的に不自然であるが両者の関係性と持ち出さ
れる場との相関関係によっては不自然でなくなることがある、というべきであろ
う。