1 職場で
1-1
上司・同僚・取引先による事例
1-1-1999.02.26 F鉄道工業事件(静岡)
上司であるX男およびY男が、A女に対して、わいせつ行為を行い、侮辱的な発
言をし、性的に中傷する噂を流すなどしたことにつき、X男、Y男および会社に
200万円の支払いが命じられた事例。
[裁判所]静岡地裁沼津支部
[年月日]1999(平11)年2月26日判決
[出典]労働判例760号38頁
[評釈等]水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001)
[事実の概要]上司X男は、A女が断りきれずに同行した夕食後の車内で、A女の下着に
手を入れる等のわいせつ行為を行った。さらにX男は、A女がS支店長と特別な
関係にあるかのような噂を流すとともに、職場で、「この人は、ジュースやお酒
ではなく、男が欲しいんだ」などと侮辱的な発言をした。また、上司Y男は、A
女に抱きついたり、太股を触ったことが5、6回あり、A女がS支店長の下で仕事
をするようになると、X男とともにA女とS支店長が特別の関係にあるかのよう
な噂を流した。被告会社は、X男らの報告を受けてA女を解雇したものの、A女
の地位保全仮処分決定を受け解雇を撤回した。しかし、A女をY男の下で勤務さ
せ、仕事の内容を制限するなどした。
[原告の請求]慰謝料・未払い賞与として約834万円。
[判決の概要]慰謝料200万円。未払い賞与として約57万円。「X男の右行為は、職場で
の上下関係を利用して、異性の部下である原告の意思を無視して性的嫌がらせ行
為を繰り返し、付き合いに応じない原告の職場環境を悪化させたものであり、原
告の人格権を侵害する」。「Y男の右行為は、被告X男の場合と同様に、職場で
の上下関係を利用して、性的嫌がらせ行為等を行ったものであり、原告の人格権
を侵害するものである」。「被告会社は…職場環境を調整すべき義務があったの
に、十分な調査を怠り…職場環境を調整する配慮を怠ったものであり、この点に
不法行為があるというべきである」。
[ひとこと]上掲の水谷『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』]X頁によると、本
件は715万円で和解。