1 職場で
1-1
上司・同僚・取引先による事例
1-1-1999.03.12 水産物販売会社事件(東京)
訴外上司X男から受けたセクシュアル・ハラスメントの示談成立後もX男と原告
A女が社内で対立を続けたことについて、被告会社が、セクシュアル・ハラスメ
ントの本質を看過し、個人的争いで秩序を乱したとしてA女を解雇したことには
過失があるとして、311万円の支払いが命じられた事例。
[裁判所]東京地裁
[年月日]1999(平11)年3月12日判決《確定》
[出典]労働判例760号23頁
[評釈等]水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの法理と実態』(信山社・2001)
[事実の概要]訴外上司X男からA女が受けたセクシュアル・ハラスメント(「ホテルに
行こう」と繰り返し誘われ、謝罪を求めたところ「女性にとって誇りととればい
いじゃない」「深刻にとらえることない」等と述べまともに取り合わなかった)
について、弁護士を介して30万円の慰謝料支払いに合意した後も、X男とA女が
社内で対立を続けたことにつき、被告会社は、セクシュアル・ハラスメントの本
質を看過し、個人的争いで秩序を乱したとして、A女、X男をともに解雇した。
A女が会社を被告として提訴。
[原告の請求]逸失利益・慰謝料として561万円。
[判決の概要]311万円。「被告代表者としては…X男が原告にした言動が…原告に対す
るセクシュアル・ハラスメントにほかならないことを当然見抜くべきであったと
言わなければならない。被告代表者が右のことを見抜いていれば…原告の不安を
除去するために適切な措置をとらなければならないことに気が付いたであろう。
しかるに、被告代表者は、セクシュアル・ハラスメント問題の本質を見抜くこと
ができず、その加害者であるX男の弁解を軽信し…結局、本件解雇をするに至っ
たものであるから、被告代表者が右判断に基づいて原告を辞めさせる正当な理由
があると考えて本件解雇をしたことには、過失があるというべきである」。
[ひとこと]