1 職場で
1-1 上司・同僚・取引先による事例
1-1-2002.11.14 税理士事件(大分)
 職員にセクシュアル・ハラスメントを行った末に解雇した税理士に、220万円の支払いが命じられた事例
[裁判所] 大分地裁
[年月日] 2002年11月14日判決《確定》
[出典] 労働判例844号92頁
     朝日・読売とも(西部)11月16日(朝刊)
[事実の概要]
 税理士X男(有限会社代表取締役)は、職員A女の勤め始めた直後から「ホテルに行こう」と誘ったり、勤務時間中に床に押し倒して胸を触るなどの強制わいせつ行為を繰り返していたが、A女から仕事以外の会話をしないなどの反抗的な態度を取られると、「明日から来なくてよい。給料は来月分まで振り込む」と解雇した。
[原告の請求] 660万円。
[判決の概要]
 220万円。原告の主張の信用性について「原告の供述及び…陳述書の内容は、具体的かつ自然なものであり、原告は本件解雇前からすでに被告のセクハラ行為について公的機関に相談している(そうでなければ本件解雇の翌日に、直ちに警察及び雇用均等室のような公的機関へ相談に行けるとは考えられない。)し、昨今の雇用状況に照らすと、原告が再就職を懸念して被告のセクハラ行為に耐え、被告からの飲食の誘いを受け続けたり、出勤し続けたりしたことは十分納得でき、そこに不自然さは感じられないから、原告の供述及び…陳述書…は十分信用できる」。
 解雇は「原告が被告のセクハラ行為を受けないために、被告に対して厳しい態度を取り始めたことから、被告もこれに反応して、事務所内の雰囲気が悪化し、その中で、原告が仕事に関しても被告に対し反抗的な態度を示したためになされたもの」であり、原告の態度は「被告が原告に対しセクハラ行為を行ったため、やむを得ず採った態度であるから、原告に帰責事由があるとは言えず、むしろ、このような結果は被告自らが招いたもの」であり、原告が仕事に関して反抗的な態度を示した点には「多少行き過ぎの感が否めないが、それまでの被告のセクハラ行為の態様に鑑みれば、原告は被告に対し拒否的な感情を持たざるを得なくなったものと推認でき、そうであるなら、原告がこのような態度に出たのは仕方のない面があり、このことが就業規則…の解雇事由に該当するとは到底言えず、これまた、被告が自ら招いたものと言わざるを得ない」。「本件解雇は不法行為上の違法性を帯びた行為と認められ〔る〕」。 【引用者注:( )は原文、〔 〕は引用者による挿入】
[ひとこと]
 被害者の「反抗的」な態度は「被告が自ら招いたもの」であるから解雇は違法であると明示した。