1 職場で
1-1 上司・同僚・取引先による事例
1-1-2003.01.14 K設計会社事件仮処分(愛知)
被告会社が、社内のセクシュアル・ハラスメントに関して申立を行ったA女に対して、不利益処分を課すことを目的として出した配転命令とそれに基づく懲戒解雇が無効とされた事例
[裁判所]名古屋地裁
[年月日]2003(平15)年1月14日決定
[出典]労働判例852号58頁、LEX/DB(オンラインデータベース)
[事実の概要]
被告会社内で就業時刻後に設けられた酒席で、上司や同僚からなされた性的な言動について不快感・屈辱感をいだいたA女が、7週間後にしかるべく対応を求めて被告会社に申し入れを行ったものの、その回答に納得できなかったことから雇用均等室にも相談するなどしたところ、被告会社はA女に対する事情聴取の場を設けることなく配置転換を打診し、これを拒絶したA女に「上司に詫びを入れるか、自己都合で辞めるか」「雇用均等室に相談して話を大きくした責任をとって転勤するか、辞めるか」「会社を辞めて嫁に行けばよい」「転勤しない限り仕事はさせない」などと述べて配転命令を発し、これに従わなかったA女を懲戒解雇した。
[原告の請求]労働契約上の地位確認、解雇前と同額の賃金を本案判決確定まで支払え
[決定の概要]
労働契約上の地位確認、解雇前と同額の賃金を1年間支払え。A女が申し立てたセクシュアル・ハラスメントは認定。「本件配転命令は、本件申し入れをしたことなどについて何ら責任を負うべき立場にないA女に対し、不利益処分を課すことを動機・目的として行われたものであり、不当な動機・目的に基づくものというべきであって、配転命令権を濫用した無効なもの」であり、これに応じなかったことを理由とする懲戒解雇も無効。
[ひとこと]
本件仮処分は、第2次仮処分および本案訴訟第1審では、原告の敗訴となった。5-1-2004.04.27 を参照。