1 職場で
1-1 上司・同僚・取引先による事例
1−1−2009.6.12 K財団法人事件(東京)
理事のパワハラやセクハラ等該当行為を報告した総務部長に対してなされた降格配転及び解雇につき、合理的な理由を欠き社会通念上相当であるとは認められないとして、当該総務部長が労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、未払賃金・賞与の支払を認めるとともに、不法行為に基づく慰謝料を一部認めた事例。
[裁判所]東京地裁
[年月日]2009(平成21)年6月12日判決
[出典]労働経済判例速報2046号3頁
[事実の概要]
K財団法人(被告)の総務部長(原告)が、被告の常務理事兼事務局長にパワー・ハラスメント及びセクシュアル・ハラスメントに該当する行為があるとして被告に対し報告文書を提出したこと等により、原告は降格配転され、懲戒解雇された。原告が、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、未払い賃金・賞与の支払い及び不法行為に基づく慰謝料支払いを求めた。
[判決の概要]
原告の作成した報告書は、根幹的、基本的部分では、真実を指摘している文書というべきであり、懲戒事由に該当する事実を認めることはできないとしたほか、他の行為を理由とする解雇処分についても、解雇は重きに失し、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、権利の濫用として無効であるとし、原告が労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、未払賃金・賞与の支払を認めた。
慰謝料については、原告が本件報告書の内容を外部に流出させたことにより、被告の社会的信用が棄損された等の事情も考慮し、金1000万円の請求のうち、金50万円のみ認容した。
[ひとこと]
団体のトップのパワハラ・セクハラ該当行為を内部報告した者に対して降格配転や懲戒

解雇処分をした法人の行為を権利濫用とした判例。(弁護士 川見 未華)