1 職場で
1-1 上司・同僚・取引先による事例
1−1−2010.6.15 菓子メーカーM社事件(奈良)
派遣社員へのセクシュアルハラスメントで,派遣先会社の責任が認められた事例
[裁判所]奈良地裁
[年月日]2010(平成22)年6月15日判決
[出典]LLI/DB(L06550334)
[事実の概要]

女性Xは,平成17年12月,人材派遣会社Y社の社員として菓子メーカーZ社の地方工場に派遣され,あめの袋詰めや検品などを担当していたが,平成19年9月頃から,当該工場で上司甲から携帯電話の番号を教えるよう何度も求められたり,体の関係を求められたり,体を触られたりした。Xは,平成20年6月,抑うつ神経症と診断され,現在も休職中である。そこでXは,平成20年12月,上司甲からセクシュアルハラスメントを受けたとして,派遣先会社であるZ社及び派遣会社Y社に対し慰謝料など約700万円の損害賠償を求める訴訟を提起した。なお,上司甲は,Xが提訴をした当日に自殺した。また,Xは平成21年7月に労災認定を受けている。
[判決の概要]
裁判所は,「半年以上続いたセクハラ行為で精神的苦痛を被った」として,Z社の上司甲に対する使用者責任を認め,Z社に慰謝料など77万円の支払を命じた。ただし,抑うつ症との因果関係は認めなかった。他方,派遣会社Y社に対する請求については,Y社はZ社側にXの要望を伝えるなどセクシュアルハラスメント対策を講じていたなどとして棄却した。
[ひとこと]
派遣社員へのセクシュアルハラスメントにつき派遣先会社の責任が認められた珍しいケース。
(弁護士川見未華)