1 職場で
1-1 上司・同僚・取引先による事例
1−1−2012.1.31 G事件(東京)
被告会社の従業員から被告会社の代表者と店長により強姦されたこと等により肉体的精神的苦痛を受けたとして、会社らに対し損害賠償請求を求めたが、棄却された例
[東京地判2012(平24)年1月31日 労働判例1060号30頁]
[事実の概要]
原告Aが被告会社に内定が決まり大学卒業後α店の従業員として勤務することとなったが、被告会社の代表者であった被告B及びα店店長であった被告Cによって強姦等されたこと、さらには、強姦等されたことに関する被告会社会長のDの言動によって、肉体的精神的苦痛を受けたとして、被告らに対し,不法行為に基づく慰謝料1,000万のほか治療費、逸失利益、弁護士費用合計8,815万617円と遅延利息を求めた事案である。
[判決の概要]
1 被告Bとの性交渉について
 2度とも原告は被告Bの行為を拒絶するそぶりを見せていない。
 また、被告Cの来訪と重なる際に被告Bの来訪を断っているが、そのように2度目の来訪時も断れたはずである。
 被告Bは「当時まだ30歳であり、23歳の原告と年齢も近く」、原告らスタッフへの業務連絡のメールからして「社長風を吹かせるようなものではない」。
 被告Bとの性交渉に同意していなかった旨の原告の供述等を退け、合意の上の性交渉であったとして、被告Bの不法行為責任も被告会社の使用者責任も認めなかった。
2 被告Cとの性交渉について
 原告が被告Cとの性交渉後も被告Cからの食事の誘いやアウトレット等へ出かける誘いも断っていないことや、クリスマスのメールからしても原告と被告Cが親密な関係にあったことがうかがわれるとして、原告の供述を退け、被告Cの不法行為責任も被告会社の使用者責任も認めなかった。
3 被告Dの発言につき、違法性を否定し、被告会社の不法行為責任を退けた。
[ひとこと]
被告Bにつき、控訴審の東京高判2012(平成24)年8月29日は一部原告の請求を認めた。(弁護士打越さく良)