1 職場で
1-1 上司・同僚・取引先による事例
1−1−2014.2.28 A会社事件
被控訴人(原告)が、以前勤務していた会社の役員であった控訴人(被告)から度重なるセクシュアル・ハラスメントを受け精神的苦痛を被り不安障害を発症したとして、慰謝料等を請求した事案の控訴審で認容額が減額された事例
[東京地裁2014(平成26)年2月28日判決 LEX/DB25517952]
[事実の概要]
被控訴人は、勤務する会社の取締役を務めていた控訴人から、2012年9月から同年11月にかけて、継続的に、性的羞恥心を害する発言や、身体を触るなどのセクシュアル・ハラスメントを受け(本件セクハラ行為)、精神的苦痛を被り不安障害を発症したとして、控訴人に対し、慰謝料、治療費、弁護士費用等合計112万6790円及び遅延損害金を請求した。原審(東京簡裁)は、被控訴人の請求を90万6790円及び遅延損害金の限度で認容したところ、控訴人が控訴した。
[判決の概要]
本件セクハラ行為は、本件会社内で被控訴人に対して優越的な地位を有する控訴人が行ったものであり、被控訴人の胸など身体への接触を伴うものであったから、被控訴人に対して、相当に不快感を抱かせるものであったということができるが、他方で、本件セクハラ行為がされた期間は約2箇月にとどまる上、その間においても、頻繁に行われたものとまではいい難く、身体への接触は数回にとどまる。また、被控訴人について作成された診断書には、被控訴人が不安障害を発症した原因や被控訴人についての具体的な所見は記載されていない。このように、本件セクハラ行為が必ずしも長期間、頻回に及ぶものではなかったことなどに照らすと、同診断書の記載をもって、控訴人による本件セクハラ行為が被控訴人の不安障害の発症原因であることを推認することはできない。
これらの事情に照らせば、被控訴人が本件セクハラ行為によって被った精神的苦痛を慰謝するのに相当な金額は、60万円とするのが相当である。また、弁護士費用相当額の損害の額は6万円であり、被控訴人の請求は66万円及び遅延損害金の限度で認められる。
[コメント]
原審に比べて慰謝料等の認定金額が減額された事案。
(弁護士 折井 純)