2 教育の場で
2-1 教師から学生・生徒に対する事例
2‐1‐2001.11.30 N大学事件(東京)
 教授X男が、合宿先の旅館で大学3年生A女の胸を触るなどしたことにつき、X男と大学に180万円の支払いが命じられた事例
[裁判所] 東京地裁
[年月日] 2001(平13)年11月30日判決
[出典] 判例時報1796号121頁
[事実の概要]
 教授X男(47)は、旅館での合宿中、批評会会場から自室に戻っていたところ、呼びに来た大学3年生A女を室内の布団の上に引き寄せ、シャツのボタンをはずして胸や陰部をなで回し、その間に室内の明かりを消した。A女が遅いことを心配した訴外P女がX男の部屋へ入ってきたところで行為は中断された。A女はPTSDに罹患。
[原告の請求] 大学とX男に1,200万円
[判決の概要]
 大学とX男は連帯して180万円支払え。X男の供述は、A女・P女の供述に反するうえ、不自然である。A女がわいせつ行為後もX男の授業・合宿に参加していたことは、不自然・不合理とまではいえない。X男が後の合宿で訴外Q女を朝まで同室させたことに対してA女が嫉妬したために虚偽の申立をしたとみることはできない。
 大学の使用者責任については「わいせつ行為自体は、正規の授業時間外に学外で行われた合宿において行われ、しかもその参加者の大多数が当時被告X男の授業を履修していなかったものではあるが、X男の指導者としての地位、合宿の批評会と授業内容との共通性、合宿参加者と授業参加者との共通性等の事情に照らせば、本件合宿の実施は…授業の延長としての性格を有するものというべきであるから…わいせつ行為は、被告大学の事業の執行行為と密接な関連を有する行為と認められる」。
[ひとこと]
 大学における学生へのセクシュアル・ハラスメントについて、大学の使用者責任がはじめて認定された事例。原告は強姦未遂を主張したが認められなかった。証人P女の証言が大きいが、同女が入室してきたときの状況についてX男は、X男とA女のただならぬ状態を認めたP女が突然に室内で爪先立ちになりバレエのポーズをとり始めた、というあまりにも唐突で不自然な説明をした。大学はX男にどのような処分を下したのだろうか。