2 教育の場で
2-1 教育者から学生・生徒に対する事例
2‐1‐2002.03.14 TS大学名誉毀損事件(宮城)
 別件訴訟でセクシュアル・ハラスメント行為を訴えられていた教授X男を批判するパンフレットの配布行為は、公益を図る目的でされたものであり、記事も真実であるから、名誉毀損にはあたらないとしてX男の訴えが棄却された事例
[裁判所] 仙台地裁
[年月日] 2002(平14)年3月14日判決
[出典] 判例時報1792号109頁
[上訴等]
 関連裁判:2-1-2001.03.29
      2-1-1999.06.03
[事実の概要]
 教授X男の別件訴訟の相手方である訴外P女を支援する目的で、X男の勤務する大学の学生である被告は、X男が訴外学生R女に「お前はかわいいから犯したい」と言った、訴外学生Q女に「お前はかわいいな」といいながら抱きついた、若手教師S男に暴力をふるった、等の事実を記載したパンフレットを大学内で約100部配布した。
[原告の請求] 500万円と謝罪広告。
[判決の概要]
 棄却。本件配布行為は、訴外P女への支援を高め、そのことを通じて大学当局、教職員、学生のセクシュアル・ハラスメントへの関心を高め、それを根絶することを目的としており、公益を図る目的でされた。大学教授としての適格性に関する事実は公共の利害に関する事実であるから、人格に関する事実の摘示があったとしても、人格攻撃を主目的としていたとは認められない。X男を大学から放逐することを目的としていたとしても、教育者としてふさわしくない者を批判することは、最終的には教育現場から排除することに行き着かざるを得ないから、本件配布行為が公益を図る目的を有さずになされたものとはならない。
[ひとこと]
 認定事実のひとつに、X男が飲み会で訴外Q女に対して「どうしてあんな奴と付き合ってるんだ」と言った後に抱きついたというのがあるが、これは別件訴訟においてX男がP女を襲ったときに発したのと同じ言葉である。P女裁判の控訴審では裁判官が異常にX男に同情的で、「行為は衝動的・偶発的だった」と擁護していたが、本判決を読むと、X男は「偶発的」になどではなく、日常的に、自分より弱い立場にある者に対して暴力・性暴力を振るっていたことが分かる。