2 教育の場で
2‐1 教育者から学生・生徒に対する事例
2−1−2010.2.5 公立中学校事件(宮崎)
公立中学校の教諭が女子生徒に対しキスなどのセクハラ行為を行ったため、同教諭を懲戒免職処分としたことについて、任命権者の裁量権の濫用は認められないとされた事例
[裁判所]宮崎地裁
[年月日]2010(平成22)年2月5日判決
[出典]判例タイムズ1339号97頁
[事実の概要]
Xは、公立中学校の教諭であり、同校の陸上部の顧問を務めていたが、同校陸上部に所属する女子生徒(当時13歳)に対してセクハラ行為を行ったとして、県の教育委員会から懲戒免職処分を受けた。そこで、Xは、セクハラ行為は行っておらず、本件懲戒処分には事実誤認の違法があるとし、Y(県)に対して、本件処分の取消しを求めた。
[判決の概要]
Xは、@女子生徒の自宅で、同生徒にキスをした、A職員室の前の廊下で、女子生徒にキスをした、Bコンピューター教室で、女子生徒にキスをし、女性生徒のウインドブレーカーの下を脱がせ、同生徒を短パンの状態にした。Xの本件セクハラ行為は、教育公務員の信用を失墜させるものとして地方公務員法33条に反するとともに、全体の奉仕者である公務員としてふさわしくない非行に当たるといえるから、Xには、地方公務員法29条1項1号及び3号に該当する懲戒事由が存する。Xは、本件セクハラ行為を否定し、不合理な弁解に終始し、真摯に反省をしているとは言い難く、女子生徒に対し口止めと受け取られてもやむを得ないような行為に出るなど、自己中心的な行動に終始し、女子生徒に対し、誠意を尽くした対応を取っているとは認められないから、Xがこれまで懲戒処分を受けたことはなく、勤務態度にも格別問題があったとは認められないこと等、Xに有利な事情を考慮してもなお、本件懲戒処分が、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したものであるとまでは認められない。以上から、Xの請求を棄却する。
[ひとこと]
本判決は、セクハラ行為の存在について、被害者と加害者の供述を丁寧に分析して事実認定をしている点、及び、セクハラ行為があったとされた場合の懲戒権者の裁量権の範囲についてについて判断している点で、参考になる。
                                 (折井純)