2 教育の場で
2‐1 教育者から学生・生徒に対する事例
2−1−2011.9.15 国立大学法人事件(大阪)
准教授である原告の非違行為を認め,国立大学法人の被告がこれに対し相応の懲戒処分をもって臨むと判断したことはやむを得ないとしつつ,停職期間を6か月間とした処分は重きに失し,裁量を逸脱した違法があるとして,処分を無効とし,処分の取消し等を認容した事例
[裁判所]大阪地裁
[年月日]2011(平成23)年9月15日判決
[出典]労働判例1039号73頁
[判決の概要]
被告は国立大学法人であり,原告は被告の准教授である。
判決は,原告は平成12年5月研究科の新入生歓迎パーティの後,当時の大学院生A(当時23歳)を研究室に誘い,Aと性交渉に及んだことが相当程度の蓋然性をもって認定されるとし,被告の認定は,むしろ相当程度控えめとした。その上で,教員が大学から使用を許されている研究室は,教育研究のための施設として教員に使用を許可しているものであることは,大学の果たす役割に照らし明らかであるとし,原告は,助教授(准教授)として,「学生が安心して教育を受け研究を行うことができるように配慮すべき立場にありながら,密室である研究室において性交渉の事実を疑われるような状況を作出した」ものであり,このような原告の行為は,教育・研究機関としての被告の秩序・風紀等を害する行為であり,被告が懲戒事由に当たるとして停職処分を選択したことは相当である。
しかし,原告には本件以前に懲戒処分歴はなく,同僚からも非常に有能な研究者として認められていたこと,原告とAとの関係は平成12年9月ころまでは相当親密な関係であって,Aが交際を強要されたことはうかがわれないこと,本件が週刊誌にスクープされたのは,約8年半経過した時点であり,それによる被告の信用低下も限定的であることなどから,停職期間はせいぜい3か月程度にとどめるのが相当であり,6か月間とした本件処分は重きに失し,裁量を逸脱した違法がある。本件処分の無効確認を認め,被告に停職期間中の給与等の支払いを命じた。 慰謝料請求(請求額220万円)は斥けた。(弁護士打越さく良)