2 教育の場で
2‐1 教育者から学生・生徒に対する事例
2−1−2015.3.4 公立大学法人A大学事件
学生に対するセクハラ行為等を理由にした懲戒処分が無効であることの確認等を求めた教授の訴えを一部認めた原判決を取消し、教授の請求をいずれも棄却した事例
[東京高裁2015(平成27)年3月4日判決 労働判例ジャーナル40号28頁、LEX/DB25505903]
[事実の概要]
控訴人(被告)に教授として雇用されていた被控訴人(原告)が、女子学生Aが体調不良で帰宅したいと申し出たことを拒否した上、Aに家庭訪問(実家ではなく、Aが居住するアパートへの訪問)を受けるのが当然かのようなことを述べ、Aが拒否すると、「それじゃ単位は要らないんだな」等と単位取得の面で不利益な取扱いを受ける旨発言した((1)の行為)。その後、Aの携帯電話に電話をかけ、Aが電話に出なかったことから、Aの実家に電話し、Aが単位を取得できず卒業できなくなる等と話した((2)の行為)。
被控訴人は、女子学生Bに対し、「もう5回休んでいるから卒業が危ない」と言って、デートの誘いをした((3)の行為)。さらに、被控訴人は約30名の学生の前で、Bという名前について、「名前を中国語でいうとオーストリア人だ」との発言をした((4)の行為)。
控訴人は、これらの行為が就業規則所定の懲戒事由に該当するとして、停職1か月の懲戒処分(本件処分)を行った。
[判決の概要]
被控訴人は、懲戒処分の無効確認のほか、停職期間中の未払賃金及び遅延損害金の支払を求めるとともに、本件処分等により名誉を棄損されたとして、不法行為に基づき、慰謝料及び遅延損害金の支払並びに控訴人のホームページへの謝罪文等の掲載を求めて提訴した。原審(甲府地裁平成26年2月25日判決)は、このうち処分の無効確認と未払賃金請求を認容し、慰謝料請求を一部認容し、謝罪文の掲載請求を棄却した。
控訴審判決は、[事実の概要]の(1)〜(4)の行為を詳細に認定した上、(1)(2)をアカハラ行為、(3)をセクハラ行為、(4)をアカハラ行為であって、就業規則所定の懲戒事由にあたり、本件処分に裁量権の逸脱、濫用があったものということはできないとした。その上で、原判決中控訴人敗訴部分を取り消した上、同部分に係る被控訴人の請求をいずれも棄却した。(弁護士打越さく良)