2 教育の場で
2-2 教育者によるその他の事例
2-2-1997.03.27 K大学名誉毀損事件(京都)
京大教授A女が、京大教授X男に関して「レイプに始まるすさまじいまでのセクハ
ラ」等と記載したことは名誉毀損にあたらないとして、X男の損害賠償請求が棄却
された事例。
[裁判所]京都地裁
[年月日]1997(平9)年3月27日判決
[出典]判例時報1634号110頁
判例タイムズ992号190頁
[評釈等]鬼塚賢太郎・法令ニュース33巻8号27頁
水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001年)
[事実の概要]教授X男が当初大学生であった訴外B女に対するレイプに始まるセクシュ
アル・ハラスメントを7年間にわたり行ったことについて、B女が弁護士会に人
権救済の申し立てをしたことから、A女は「X元教授のセクシュアル・ハラスメ
ントといわれるものについて調査を行った。…その過程で浮かび上がってきたの
が、一人の女性の、レイプに始まるすさまじいまでのセクハラの証言であった」
等の記述がある手記を新聞に掲載した。
[原告の請求]1,000万円。
[判決の概要]棄却。「被告が本件手記及び同文書を公表した行為は…真実もしくは真実で
あると信ずるに足りる相当な理由があり(内容が公共の利害に関する事実であり、
かつ専ら公益を図る目的で公表したことについては争いがない。)、その各論評部
分については通常人が持ち得る合理的な論評の範囲を越えるところがない相当な
ものであるから、結局、原告の名誉を違法に毀損したとの責任を負うものではな
いというのが相当である」。【引用者注:( )は原文。】
[ひとこと]本件では、間接的にX男のB女に対するセクシュアル・ハラスメントが認定
されたが、X男とその妻が、虚偽の人権救済申し立てにより名誉を毀損されたと
してB女に対して起こした訴訟(1,000万円請求)においても「X男が地位を利
用し、暴力を用いてB女に性的関係を強いていた」と認定され、請求は棄却され
た(京都地裁1997(平9)年9月19日判決)。また、X男が自ら大学に出した辞
職願いに対する無効確認訴訟も提起したが、これも棄却された(東京地裁1996
(平8)年8月20日判決)。