2 教育の場で
2-2 教育者によるその他の事例
2-2-1998.03.20 G短大名誉毀損事件(神奈川)
専任講師A女が、教授X男のセクシュアル・ハラスメント行為を目撃したこと等を
県教育長に書簡の中で指摘したことは、X男に対する名誉毀損とはいえないとし
て、X男の損害賠償請求が棄却された事例。控訴審では逆転して名誉毀損を認め
た。
[裁判所]横浜地裁川崎支部
[年月日]1998(平10)年3月20日判決
[出典]労働判例770号135頁
[評釈等]水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001)
[上訴等]東京高裁1999(平11)年6月8日判決(認容)5-2-1999.06.08
最高裁2000(平12)年6月27日決定(上告棄却)
[事実の概要]専任講師A女が、教授X男のセクシュアル・ハラスメント行為を目撃したこ
と等を県教育長に書簡の中で指摘したことが名誉毀損にあたるかにつき、セクシ
ュアル・ハラスメントが真にあったかはともかく、そのように疑わせる行為はあっ
たと推認できる。
[原告の請求]名誉毀損に対して100万円。
[判決の概要]棄却。「職場関係内のセクハラ行為の場合、特に相手が上司である場合は
被害者であっても泣き寝入りすることも珍しくなく、単に目撃しただけであれば
関わり合いになるのも避けようとする思いは当然であって、〔セクハラス事実否
定するとの職場内アンケート結果は〕総じてにわかに採用できない」。「したが
って、原告X男に右セクハラ事実が真にあったかはともかく、そのように疑わせ
る行為はあったと推認できる」。
[ひとこと]アンケート結果を信用できないとの判断は職場の現実をよく理解しており、
評価できる判決であるが、残念ながら控訴審5-2-1999.06.08では逆
転してセクシュアル・ハラスメントの事実を否定してA女の名誉毀損を認め、最
高裁は上告を棄却した。