2 教育の場で
2-2 教育者によるその他の事例
2‐2‐2006.05.12 大学助教授から元教え子非常勤講師への事件(東京)
 大学助教授X男が、元教え子A女に対し、強引に性交渉に応じさせ、就職のあっせんを口実にたびたび交際を迫るなどしたことにつき、慰謝料300万円が認められた事例
[裁判所] 東京地裁
[年月日] 2006(平18)年5月12日判決
[出典] 判例タイムズ1249号167頁
[事実の概要]
 大学助教授X男が、元教え子A女に対し、A女の留学先で強引に求めて性交渉に応じさせ、愛人になってほしいなどと述べるメールや電話を繰り返し、A女に非常勤講師職を紹介するとともに、A女が男女の交際に応じなければ失職することがありうるなどと述べたり、専任講師職の紹介を口実に、A女からの連絡をたびたび求めた。A女は、X男からの連絡等によるいやがらせや本件性交渉について弁護士やマスコミ関係者に相談するとして、X男に1,000万円を請求した。X男はA女に200万円を支払った。雑誌Bは、X男とA女との関係を記事にして掲載した。
[原告の請求] <本訴> X男からA女とBに対して、慰謝料約1,200万円ほか
        <反訴> A女からX男に対して、慰謝料約1,200万円
[判決の概要]
 X男の請求は棄却。X男はA女に110万円を支払え。
「本件性交渉は強姦とまでは認められない…〔が〕X男は、自己がA女に対して大学講師職をあっせんしうる立場にあることを示すことで、かねてからの望みどおり、本件性交渉に及んだものと認められる。X男は…A女の自由意思によるものないし…誘いかけによるものであったと主張するが…A女が大学講師職のあっせんとはまったく無関係に本件性交渉に及んだものとは、到底考えられない」。「X男は…自己の地位を利用し、A女の就職の希望及び当時置かれていた状況に乗じて、A女に本件性交渉に応じることを余儀なくさせ〔たのであり〕…X男の行為は、社会通念上、是認できない違法なものであって…A女の人格権を侵害した」。慰謝料300万円が相当、200万円は受領済み。
A女による1,000万円の請求については、「いささか度を越えている…が…自己の受けたセクハラ行為について抗議し、加害者であるX男に対し、これに対する慰謝料を請求することや事実を公表することなどの具体的不利益を申し向けることで今後の被害の防止を図ろうとすることには、やむを得ない面があ〔る〕」。
雑誌Bの記事は、社会的に相当なものとして違法性が阻却される。
[ひとこと]  控訴。