4 その他
4-1 政治家による事例
4-1-1997.03.18 北海道富良野市議不動産会社事件
北海道富良野市議で妻子ある会社社長X男が、従業員A女に対して、「身も心も一
緒にならないと話もできない」と言ったり、車内でいきなり抱きついたり、自宅
に無断で入りA女の膝の上に顔を埋めるなどしたことに対して、200万円の支払い
が命じられた事例。
[裁判所]旭川地裁
[年月日]1997(平9)年3月18日判決
[出典]労働判例717号42頁
[評釈等]水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001)
[事実の概要]富良野市議で妻子ある会社社長X男は、従業員A女に対して、「身も心も
一緒にならないと話もできない」「腰を揉んでほしい」「浮気するのなら、女性
は夫のいる人で、子どももそれなりの教育をし、家庭も円満なのがよい。男性な
ら地位も名誉もある人がよい」等と言ったり、打ち合わせで現場に行った際に押
し倒したり、夜間車で待ち伏せしたり、車内でいきなり抱きついたり、自宅へ執
拗に電話をかけたり、自宅に無断で入りA女の膝の上に顔を埋めるなどした。
[原告の請求]300万円。
[判決の概要]200万円。「原告は、被告X男の行為によって、羞恥、不安、嫌悪などの
精神的苦痛を経験すると共に、被告会社での就労を継続して被告の行為を甘受す
るか、被告会社を辞めるかのいずれかを選択せざるを得なくなり、最終的に後者
を選択したことが認められる」。「被告X男の各行為は、原告の、性的領域にお
ける人格の尊厳を故意に侵害する不法行為にあたると同時に、原告の雇用関係継
続対する権利をも不当に侵害する行為と言うべきである」。「原告と被告X男と
の関は、被告会社の従業員と代表取締役であるという以外にはな〔い〕」。「し
たがって、被告会社は、その代表者である被告X男の前記不法行為によって原
告に生じたすべての害について、責任を負うというべきである」。
[ひとこと]事件当初は原告の理解者であった同僚従業員らが、裁判になると、市議でも
ある被告社長の側につき、原告の主張を否定し、原告への人格非難ともいえる証言
をしたが、裁判官は原告の供述の信用性が勝るとした。セクシュアル・ハラスメン
トと戦うことは権力と戦うことであると実感させられる判決である。