その他

- 政治家による事例

--1998.03.26 千葉県船橋市議不動産会社事件

    千葉県船橋市議でもある社長X男が、新入社員A女をモーテルに連れ込み性交渉

を強要したこと等に対して、原告の請求通り330万円の支払いが命じられた事例。

[裁判所]千葉地裁

[年月日]1998(平10)年326日判決

[出典]判例時報1658143

判例タイムズ1026160

[評釈等]水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001

[上訴等]控訴後和解

[事実の概要]市議でもある社長X男(41)は、A女(21)に対して、その入社直後から

パソコン画面で卑猥な映像を見せたり、体を触るなどの行為を繰り返していたが、

夕食の席で気分の悪くなったA女をモーテルに連れて行き、トイレに駆け込んで

逃げ出そうとするA女を押さえ込むなどして姦淫した。翌日謝罪を求めたA女に

対して、X男は反対に「キャリアウーマンになれ」などと発言し、A女が「辞め

ろということですか」と聞くと、「仕事のできない人間は会社には要らない」と

言った。その後第三者を交えて数回の話し合いを持ったが、X男が謝罪を拒否し

たためA女は退職。

[原告の請求]330万円。

[判決の概要]330万円。被告は原告の同意を主張しており、その根拠として、原告が当

夜の夕食の席で破廉恥な態度を取ったからとするが、第三者も同席していた場所

でそのような態度をとることはにわかには首肯しがたく、仮に、被告X男に対し

て好意を持っていると受け取られるような態度が原告に見られたとしても、「両

者の年令や立場、勤務を始めてからまだ三週間足らずにすぎないことなどに照ら

すと、それを原告が遊びたい気持ちでいると受け止めてモーテルに行こうと考え

ることは飛躍に過ぎ、まして〔同席していた〕訴外Y男が得意先に寄ると言って

先に自動車で行ってしまったために、原告が被告X男の自動車に乗ったことをも

って、原告もモーテルに行くのを承知したということは到底できない」。「原告

の年齢や被告との関係、両者の立場や性別、体格等の相違といった事情を考慮す

ると、原告が徹底して抵抗するのが当然というように考えることはできないので

あって、モーテル内で原告が被告の言いなりになった部分があるからといって、

それをもって原告が被告との性交渉を求めていたとか、同意していたと評価する

ことはできず、また、その際の細かな言動についての供述が曖昧であったとして

も、その置かれた状況を考えればやむを得ないというべきであって、格別異とす

べきものではない」。

[ひとこと]原告は入社からわずか35日で退職に至った。判決は、性暴力にさらされたと

きの被害者の動揺、混乱を「格別異とすべきものではない」と的確に理解してお

り、高く評価できる。なお、得意先に寄るとして先に行ってしまったはずの訴外

Y男(被告会社の営業部長)は、その時間コンビニで週刊誌を読んでいるところ

で原告と遭遇してしまった。新聞報道によると敗訴を受けて、市議でもある被告

は、「議員バッジをはずすことも考えなくてはいけない」と話した。