4 その他
4-4 家族による事例
4-4-2005.02.17 養父による事件(福岡)
養父X男が、当時9歳から11歳であった養子A女に対してわいせつ行為および姦淫行為を行い、X男の行為終了から3年以上経過後にA女が提起した損害賠償請求訴訟について、消滅時効の起算点は早くともA女が13歳になってからであるとして、440万円の支払いを命じた事例
[裁判所] 福岡高裁
[年月日] 2005(平17)年2月17日《確定》
[出典] 判例タイムズ1188号266頁
[評釈] 松本克美・法律時報78巻9号105頁以下
[事実の概要]  養父X男は、1997年から99年までに当時9歳から11歳であった養子A女が自らになついていることに乗じて、同女の性器を触る、手淫、口淫をさせるといったわいせつ行為および姦淫行為を行った。A女はX男に言われるままこれらの行為に応じ、後ろめたさなどから実母Bに相談することはしなかった。X男は2000年1月にBと離婚し、A女と離縁した。Bは02年8月頃、A女の友人からの話を端緒としてA女から被害を打ち明けられた。A女は02年11月にX男へ催告を行い、03年5月に本件訴訟を提起した。原審はA女主張の事実を認定し、消滅時効の起算点をX男がBと離婚しA女と離縁した00年1月としたうえで、440万円の支払いを命じた。X男控訴。
[原告の請求] 原審での請求550万円
[判決の概要] 控訴棄却。民法724条の「損害」を知るとは、単に損害の発生を知るだけでは足りず、加害行為が不法行為であることを認識する必要がある。A女を診断した医師によればA女はX男からのわいせつ行為を愛情と混同していたため自分を被害者と捉えることが困難であり、不法行為を構成するものとの認識を持っていたとは認められない。なお、刑法176条・177条において13歳未満の者については暴行・脅迫を用いなくとも強制わいせつ罪・強姦罪が成立することは、若年者には性的自由の意味することについて判断能力がないことを前提としていると見ることができるので、本件のような被害については、特段の事情がない限り、早くてもA女が13歳になる(01年8月)前には、不法行為を構成するとの認識をもつことは困難であると認めるのが相当である。
[ひとこと] 消滅時効起算時を原審がX男との離婚・離縁時とし、当審が13歳としたことについて、上掲松本評釈で議論されている。なお、A女はX男に対する刑事告訴もしたが、嫌疑不十分で不起訴処分とされた。
児童に対する性的虐待の消滅時効に関して以下の事件がある。
2-1-2002.06.11 (高校教師から生徒への事例)
4-4-2002.01.16 (実父による事例)
2-1-1999.07.29 (ピアノ教師から生徒への事例)