敗訴の事例

5-1            職場で

--1995.03.24 S建設子会社事件(神奈川)

    上司X男によるセクシュアル・ハラスメントにつき、部下A女が求めた損害賠償

 請求は、A女の供述が信用できないとして棄却された事例。控訴審では逆転勝訴。

[裁判所]横浜地裁

[年月日]1995(平7)年324日判決

[出典]判例時報1539111

判例タイムズ1011195

労働判例67020

労働経済判例速報16613

[評釈等]浅倉むつ子=今野久子『女性労働判例ガイド』40頁(有斐閣・1997

    水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』(信山社・2001

[上訴等]東京高裁19971120日判決(逆転認容)《確定》1-1-1997.11.20

[事実の概要]A女(25)は、二人きりの事務所内で上司X男(49)が突然抱きつき、キ

スをし、下腹部を触るなどのわいせつ行為を20分以上行ったと主張した。

[原告の請求]550万円。

[判決の概要]棄却。「原告が主張する被告の行為は、原告の性的自由を著しく侵害する

強制わいせつ行為に比類すべきものであって、このような攻撃を受けた場合、通

常であれば冷静な思考及び対応を採ることはほとんど不可能であると考えられる

ところ、原告が抵抗して逃げようとしなかった理由として挙げる右の各事由〔「

本当に逃げようと思って抵抗して逃げられたかどうか分からないし、下手に騒い

でよけい部長を煽り立てるようなことになっても困る」〕は、余りに冷静・沈着

な思考及び対応に基づくものであり、納得し難いものである」。

[ひとこと]5−2−1997.01.28と同じ理由で、性被害に遭いながら冷静な

思考・態度を採る者は信用できないとして、わいせつ行為の事実を否定した。し

かし、両事件ともに、高裁はそのような行動を理解できるとして原告が逆転勝訴

し確定している。