5 敗訴の事例
5-1
職場で
5-1-1999.04.02 B発毛サービス会社事件(東京)
泊りがけの研修において社長X男から混浴を強制された事実はないとされた事例。
[裁判所]東京地裁
[年月日]1999(平11)年4月2日判決《確定》
[出典]労働判例772号84頁
[評釈等]水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの法理と実態』(信山社・2001)
[事実の概要]A女は、泊りがけの研修において社長X男から混浴を強制されたこと等か
ら退職を余儀なくされたと主張した。
[原告の請求]500万円。
[判決の概要]棄却。「原告が供述する被告X男や被告会社幹部の言動は、それが、いつさ
れたのかが明確でなく、実際に混浴に参加したときの具体的状況、実際には参加
しないですんだときの状況との違いも明らかでない」。「原告の陳述書及び供述は、
それ自体信用性、具体性、客観性に乏しいといわざるを得ない」。
[ひとこと]原告は、被告会社の顧客であった訴外Y男からストーカー行為を受け続けた
(Y男は原告に傷害を負わせて罰金刑を受けた後に、脅迫行為を行い懲役10月
の実刑判決を受けた)のに、被告会社が安全配慮義務(営業店舗内に警報設備を
備えること、原告に警報装置を常備させること)を怠った、とも主張したが、判
決は、Y男の行動からすれば、「原告主張の措置を執ったとしても、被害を防ぐ
ことは困難であったと考えられ、結局は、被告会社の執った方法〔原告からの転
勤願いに応じたこと〕によらざるを得なかったというべきである」として退けた。